Ep.15 つまり杞憂ってことでよろしいよな??? ページ16
「…平和って最高……」
案の定店長と先輩に大目玉を食らったあの日から、既に一週間が過ぎようとしていた。
あんな大事件があったからこそ稼ぎ時だと考える璃月人には毎回本当に驚かされる。
…まあ、今は私もその「璃月人」の一人なんだけれど。
聞くところによると、印象的な金の髪を持った旅人さんは少し前に璃月から旅立ったらしい。
次の行き先は稲妻だそうだ。
さて、ここで私の記憶についてもう一度話しておこうと思う。
今更そんな話を持ち出す理由はただ一つ。
私がこの先のストーリーを知らないからである。
知らないというか、覚えていないというか、思い出せないというか。
とにかく、最初に「あまりよく覚えていない」と言った理由がこれだ。
一周目の私がどこまで知っていたのか、どこまで見届けたのかはわからないが、今の私には璃月までの記憶しかない。
つまり、璃月に生きる私は旅の終着点を知らないまま一生を終える可能性が高い。
正直に言おう。
めちゃくちゃ知りたい。
あわよくば旅に連れて行ってほしい。
しかし、旅人さんの近くにいると「あの方」との接点が自ずとできてしまう。
それは困るのだ。
いつも通り人の来ない店内で思考の旅に出ていると、本日最初のお客様がいらっしゃった。
「やぁ、この店も被害は受けなかったみたいだね。」
今頃大量の始末書に追われていればいいな(願望)と思っていた「公子」様である。
「…店長、」
「大丈夫だからご案内して。」
出禁にしてもいいですかという前に「大丈夫」と言われてしまえば案内するほかなく。
「公子」はいつも彼が座っていた席に「いつも通り」腰かけた。
「…ご注文はいつもと同じでよろしいですか。」
「あれ、今日はお盆で顔を隠さなくていいの?」
「…まぁ…はい…」
必要ない。…というか、私とあの方が出会う可能性がないならこんなことをする必要もなかった。というのが本当のところであって、つまり「必要なくなった」が正解だろう。
「…へぇ」
何か興味深そうな声音で相槌を打って一瞬探るような眼を向けてきた「公子」に一礼を返し、そのまま厨房に引っ込んだ。
+++
「あぁ、そうだ。ここに知り合いを連れてきたかったんだけど…」
帰り際に「公子」がそう言って足を止める。
「出入りに制限があるわけじゃないので大丈夫だと思いますよ。」
そう答えると、「公子」は「それならよかった」と楽しそうに笑った。
…その笑顔に感じたこの不安は、杞憂だよな?
Ep.16 どうして、こうなるんですか。→←Ep.14 …つまり、さよならってことで。
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ブックマーク@りんごおれ(プロフ) - ものすごく最高です応援しています! (2023年3月4日 17時) (レス) id: 30dece2dde (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ありがとうございます……! 大遅刻更新ですが、良ければこれからもどうぞよろしくお願いいたします……! (2022年12月23日 22時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - とても面白い作品ですね!!楽しく読ませてもらっています。更新楽しみにしてますね!!! (2022年12月2日 22時) (レス) id: 7981f63c4d (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - 有害物質さん» 読んで頂きありがとうございます! 更新頻度は遅くなってしまっていますが、これからも楽しんでいただけたら嬉しいです……! (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ゆいピさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます……! もうなんと言いますかどんどん無料で読んで頂ければ嬉しいですといいますか……! 良ければこれからもどうぞよろしくお願い致します…!! (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろぐみ | 作成日時:2022年3月30日 16時