Ep.14 …つまり、さよならってことで。 ページ15
避難する人、海の様子を不安そうに伺う人、誘導する千岩軍。
想定より混んでいる道を、人を避けながら進む。
___あの方は、案外すぐに見つかった。
往生堂を出てから橋を渡らず真っ直ぐに海の方角へと延びる道。
海が見渡せるその場所で、あの方は荒れ狂う海と、かつて自身が海底に封じた魔神を見据えていた。
あぁ、知っている。
その横顔には、見覚えがあった。
「一周目の私」が見ていた画面の向こうの、「鍾離」の顔ではない。
「二周目の私」がすぐ近くで見ていた、岩神の。___璃月の神の顔だ。
「__っ」
何かに掴まれたようにぎゅうっと心が苦しくなる。
無意識に何か言おうと口を開いて____
我に返った。
待った、何してる私?
自分から接触しに来てどうする。
今までの努力を無駄にする気か。落ち着け。
「……はぁ〜…」
幸い私がいるのは橋の上で、あの方がいるのはその向こう側。
そう簡単に視界に入るような距離ではない。
案外周りに人がいることも不幸中…今回の「この状況」は自分で不幸に飛び込んできたようなものだが…不幸中の幸いだった。
…本当に、何をしてるんだか。
人生一つ分、なんていう意味が分からないくらい大きすぎる感情に振り回されないようここまで逃げ続けてきたっていうのに、結局ダメじゃないか。
「…店に帰ろう。」
店長と先輩は心配しているだろうか。
…心配してるだろうな。すごく怒られそうだ。
そのことを考えると少しだけ苦しかった心が落ち着いた。
しかし落ち着いた私とは対照的に、辺りは段々と落ち着きをなくしていく。
それはそうだろう。私が落ち着いたところでこの騒動が解決したわけではないのだから。
でも私は知っている。
この国の未来を。
「
___そしてそこに、あの方がいることも。
未だ荒れ狂う海に視線を向けるその人に背を向けて歩き出す。
きっと活動範囲の違う私達が出会うことも、もうないだろう。
…それでいい。
もう一度姿を目にしておきたいとも思ったけれど、結局振り返ることはできなかった。
+++
橋の上から立ち去る少女の後ろ姿を、見ている者がいた。
周りの人々は不安や恐怖を感じて狼狽えているというのに、その少女からは一切の不安を感じなかったせいで目についたのだ。
「……」
____深い茶色のコートと毛先だけ橙に染まった髪が、海風に攫われて揺れた。
Ep.15 つまり杞憂ってことでよろしいよな???→←Ep.13 つまりラストバトル開幕ってことでよろしいか?
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ブックマーク@りんごおれ(プロフ) - ものすごく最高です応援しています! (2023年3月4日 17時) (レス) id: 30dece2dde (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ありがとうございます……! 大遅刻更新ですが、良ければこれからもどうぞよろしくお願いいたします……! (2022年12月23日 22時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - とても面白い作品ですね!!楽しく読ませてもらっています。更新楽しみにしてますね!!! (2022年12月2日 22時) (レス) id: 7981f63c4d (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - 有害物質さん» 読んで頂きありがとうございます! 更新頻度は遅くなってしまっていますが、これからも楽しんでいただけたら嬉しいです……! (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ゆいピさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます……! もうなんと言いますかどんどん無料で読んで頂ければ嬉しいですといいますか……! 良ければこれからもどうぞよろしくお願い致します…!! (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろぐみ | 作成日時:2022年3月30日 16時