Ep.29 つまり腹を括るしかないってことでよろしいか？ ページ32
冷汗が背中を伝う。
落ち着け、動揺したら終わりだ。
……動揺したら終わりだとは思うものの、私の表情筋が平静を保ったまま制止してくれているのかと言われるとだいぶ自信はない。
さらに言えば、私の表情筋が奇跡的に今までにない働きをして完璧にポーカーフェイスを保っていたとしても、あまり意味などないのかもしれない。
何故かって、そんなこと。
＿＿相手が、かの岩王帝君だからに決まっている。
困ったことに、目の前で起こっている視覚情報だけを頼って鵜呑みにしてくれるような御方ではないのだ、この方は。
ただこちらの返答を待っているだけのように見せかけて、その瞳の奥で一体いくつの考えを巡らせているのだろう。
……蓮花が最後に見たあの時から変わらないその黄金の瞳は今、何を映しているのだろう。
それが私の秘密でなければいいと、切に願う。
「おかしなことを聞いたか？」
「え？」
「俺が『琉璃百合の花畑』について聞いたことに驚いているようだが」
「いいえ、まさか。おかしいなどと」と即答しかけた口を結んで言葉を閉じ込める。
『普通』は、即答しないのだ。普通は。
「……申し訳ありません。まさか博識と名高い貴方様にこのような……おとぎ話にも似たような物語を語る日が来るとはつゆほども思っていなかったもので、少々驚いてしまいました。」
しかもその話の半分が隠そうとしたはずの私自身の実体験なのだからもう笑うしかない。
何やってるんだ本当に。
今すぐ逃げたいが、逃げる手段は何一つ思い浮かばない。
ここを離れる言い訳も、同じく。
それならもう、やるしかないだろう。
なんとか誤魔化して、乗り切るしかない。
「……私が知っていることをお話することは構わないのですが、私の記憶もかなり薄れてきておりますので、思い出すのに時間がかかることもあるかと……」
言ってしまえば、必要なのは『思い出す時間』ではなく『言い訳を考える時間』なのだが。
「構わない。聞いているのはこちらだからな。……立ったまま長話をするのも辛いだろう、どこかの店に入るべきか。」
ふ、と鍾離様の視線が私から外れる。
それにほっとしたのもつかの間、「店に入る」という言葉に色々な意味で心臓が縮みあがった。
私が代金を払えないような場所に行ってしまったら。
一周目の私が知っている通りなら。
それは、まずい。
「万民堂でお願い致します！！」
その声は、多分最近で一番大きな声になっていたと思う。
Ep.30 つまり力技ってことでよろしいか？→←Ep.28 つまりフラグはその辺にあるってことですよね。
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ブックマーク＠りんごおれ(プロフ) - ものすごく最高です応援しています！ (2023年3月4日 17時) (
レス) id: 30dece2dde (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ありがとうございます……！ 大遅刻更新ですが、良ければこれからもどうぞよろしくお願いいたします……！ (2022年12月23日 22時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - とても面白い作品ですね！！楽しく読ませてもらっています。更新楽しみにしてますね！！！ (2022年12月2日 22時) (レス) id: 7981f63c4d (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - 有害物質さん» 読んで頂きありがとうございます！ 更新頻度は遅くなってしまっていますが、これからも楽しんでいただけたら嬉しいです……！ (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ゆいﾋﾟさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます……！ もうなんと言いますかどんどん無料で読んで頂ければ嬉しいですといいますか……！ 良ければこれからもどうぞよろしくお願い致します…！！ (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しろぐみ | 作成日時：2022年3月30日 16時
