第?話(過去編) ページ27
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昔俺達はとある海賊船に乗っていた。でもまぁ、下っ端だったけどな。ある日間違えて海賊船に乗った俺達だから戦闘員でも無かったし、特に何も無かった。
ただただ帰りたいっていう思いを抱えて、海賊船で過ごしていた。そんなある日、大嵐に襲われて船は沈んだ。
その時の事を俺はあんまり覚えてねぇけど、やまだぬきちゃんを抱き締めながら海に落ちたのは覚えてる。次に目を覚ましたのは何処かの医療室だった。
『ん…、何処だ…ここ。』
怠い体を起こして辺りを見渡すと、薬品が並んだ棚とドアの向こう側にやまだぬきちゃんとあいつらと見知らぬ女の人がいた。
『とりあえず…出るか…。』
ふらつく体に鞭をうって、ドアを開けるとやまだぬきちゃんが飛び付いてきた。
『う、わ。やまだぬきちゃん…』
俺にぎゅっと抱き着いてくるやまだぬきちゃんに撫でていると、コツンとヒールを鳴らして俺に近付いてきた女の人。目線は少し俺より高めの女の人だった。髪の毛を一つに縛っていて、少し派手な化粧をしている。
「具合はどう?もう大丈夫?」
そんな見た目とは合わないような幼い声だった。
『あ、はい…少しふらつきますが大丈夫です。』
「そう。ならいいや。
俺の具合の確認すると、近くにいた女の人に声をかけるとスタスタとどこかへ行ってしまった。
「うらさぁぁぁん!!!!」
『うわっ!抱き着くな!志麻!』
「いやぁーほんまビックリしましたわうらたん。うらたんだけずっと目覚ませんから志麻くんと坂田涙目だったんですよ?僕一人じゃ無理ですわ」
『それは悪ぃセンラ。』
「うらさん!うらさん!俺ら帰れるで!故郷に!」
『は?どうやって…』
「あの女の人が送ってくれるんやって!帰れるでやっと!!」
ニコニコしながらそう言う坂田は本当に嬉しそうだった。
『(久しぶりにこいつのこんな顔見た気がする…前の船じゃ一切こんな顔しなかったからか…)』
久しぶりに見た坂田の太陽のような笑顔を見れたからか俺も思わず口角をあげて
『…そうだな。やっとだな。』
あのあと、瑠璃さんに船内を案内してもらった。俺たちの個人の部屋と食堂やら風呂場…。とにかく広い船内を案内してもらった。
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作者名:LieN | 作成日時:2016年10月16日 18時