42話 ページ4
「じゃあこのUSB、ボスに渡しておいてくれる?面倒事はあんま好きじゃないし」
「ええ、分かったわ」
いつもの猫耳パーカーに身を包んだAが、気怠げに小さく欠伸をしながらUSBを手渡す。どうやら言葉通り面倒事が嫌いらしく、何の違和感もなしにそれを受け取るベルモット。
先程の男の亡骸はジンが始末したらしい。
「この後、どうするの?」
「ん〜、バーボンと飲みに行こうかな」
飴の包みをとり、口の中でころころと転がしながら艶やかな瞳で俺を捉える。
どうやら流れに従った方が良さそうだ。「ご一緒します」と答えるとこくりと頷く。
そう、とだけ残し背を向けたベルモットに少し違和感を覚えるも、Aが特に反応しないために自分の気のせいかと思い正す。
「行こ、バーボン」
「ええ」
ぐいぐいと袖を引いてくる彼女に内心驚きながらもついて行く。歩みを進める度に賑やかさと人並みが遠ざかっていき、足を止めたのは人気のない路地。
「・・・・・・さてと」
ふう、と小さく息を吐き出す音。
引き下げていたフードを外し、覗かせた瞳は凛とした輝きを秘めている。
「何を・・・・・・!」
「しっ!静かに」
突然少し背伸びをして俺の首に腕を回し、抱きつく彼女に狼狽する。思わず声を上げかけるが、彼女の冷静な声に抑え込まれてしまった。
跳ね上がる鼓動を隠したくてたまらない。
「ん、取れました」
首の辺りに手を突っ込みしばらくごそごそと手を動かしていた彼女がふとそんな声を上げる。
ぱき、と小さな破壊音が耳に届いた。
ゆっくりと身体を離した彼女の手に握られていたのは壊れた__いや、壊された盗聴器。
「いつの間に、」
「隣の部屋でモニタリングをしていた際にベルモットに付けられたのかと。やけにあっさり手を引いたのでおかしいと思ったんですよね〜」
うーん、と小さく伸びをする彼女の洞察力に脱帽。それと同時にベルモットに肩を叩かれたことを思い出し歯噛みする。
「やっと零さんって呼べますね!」
「『やっと』・・・・・・?」
「バーボンって呼ぶの慣れないんですよ、だからと言っていきなり安室さん呼びしたら不審がられますし」
「確かにそう、だな」
前髪をかきあげて天を仰ぐ。
少しでも期待してしまった自分に驚きが隠せない。
仰いだ空は、憎々しい程に快晴だった。
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シルビア-Silvia-(プロフ) - クリスさん» 嬉しいです〜!尊敬だなんて…笑ありがとうございます、頑張りますね! (2019年4月30日 8時) (レス) id: 6380122d07 (このIDを非表示/違反報告)
クリス(プロフ) - 続編おめでとうございます!毎回更新される度に飛んできてます!!夢主ちゃんと降谷さんの心情表現とか、情景描写がとても綺麗で尊敬します…!これからも更新頑張ってください! (2019年4月30日 8時) (レス) id: f8f9576f93 (このIDを非表示/違反報告)
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