●9● ページ10
.
.
「!」
突然聞こえた、透き通った声。
誰か、いたのか。反射的にAは振り向いた。
「……!」
瞬間。Aの手から、携帯が滑り落ちる。そこにいた人物に、Aは釘付けになっていた。
なびいた青い髪。優しげな目。線の細い、整った顔。
肩に黄色いジャージをかけた、本当に同じ人間なのかと思えるほど、とても綺麗な、男の子。
(……何……この子……)
「……?大丈夫?拾わなくていいのかい?携帯……」
「……え、あ、ああ……忘れてた……」
足元に落ちた携帯を慌てて拾い上げる。幸い、画面にヒビは入っていなかった。
「……見ない顔だね。どこからきたの?」
「え、あ……あの……」
普段見知らぬ人と話さないことが祟ってか、Aの口からはなかなか言葉が飛び出さない。
すると、彼はにこりと笑いAの元までやってくると、また口を開いた。
「……驚かせたかな、もしかして。そりゃあそうか、知らない奴がいきなり声をかけてくればね……」
「……」
思わず彼に目を奪われる。Aはどうすることもできず、ただ彼を見つめていた。
「……ん?俺、何か変な顔してた?」
「……!」
ぶんぶんとAが首を横に振ると、彼もまたほっとしたように笑った。
「ならよかった。君に変に思われちゃったかなって思ってたからさ。……君、名前は?俺は幸村精市。君は、なんていうんだい?」
「……水那月A……です。」
「水那月さんか。ねえ、こんなところでいつまでも立ってるのも何だし、場所を変えないかい。近くに学校があるからさ。」
そう言って笑った幸村に、Aは知らずとうなづいていた。
そうしてAは、幸村に続くように歩き出したのだった。
うるさいほど鳴り響く、携帯の通知音に気づかないふりをしたまま。
108人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
I like choco - 面白すぎます!心臓バクバクいってるんですけどどうしたらいいですか? (2020年6月28日 20時) (レス) id: 46acbe60c7 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - 海底学校・・・行ってみたい(*´▽`*) (2017年6月9日 19時) (レス) id: baf811e79e (このIDを非表示/違反報告)
ゆっきー - これ素敵です!! (2017年1月30日 0時) (レス) id: c6154ab521 (このIDを非表示/違反報告)
幻想曲(プロフ) - まゆさん» ダメですよ帰れなくなっちゃいますよ!! (2015年10月17日 23時) (レス) id: 1deaa07922 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - うー....でも仁王君ドンッってされてみたいです....w (2015年10月17日 22時) (レス) id: 8478a5faa8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:幻想曲 | 作者ホームページ:http://uranai.amanoboru
作成日時:2015年9月22日 22時