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「大丈夫?足元ふらついてるけど…。」
店の外で少しふらつく私を見ながら心配そうな目を向けてくる。
「すみません…。でも大丈夫です!ちょっと休んだら大通りでタクシー拾うので。」
「は?どこで休むつもり?」
「その辺の公園か…適当にカフェでも入ろうかと…。」
「危ない。だめ。」
強い口調で止められる。
お酒が入って少しふわふわした視界のまま、横尾さんを見上げた。
「…じゃあ、俺んちで休んでく?すぐそこだし。」
「えっ!いや、大丈夫ですよ!!」
びっくりして一歩下がると、ヒールがコンクリートの隙間に引っかかってふらついてしまう。
「わっ!ほら…!」
ガシッと腕を掴まれてなんとか体制を保って転ぶのを避けることができた。
「なんか毎回…すみません…。」
はぁ。と頭上からため息が聞こえる。
流石に呆れられたかな。
ポンと頭に手が乗ったかと思うと、横尾さんはかがんで視線を合わせてくる。
「…ほっとけないわ。」
そう、ぽつりと言うと、いつの間にか後頭部に回った手をグッと引き寄せて、あっと思う間も無く唇が重なっていた。
少し冷えた乾いた唇が、ぎゅっと私に押し付けられる。
突然の出来事に固まったまま数秒が過ぎ、ゆっくりと離れた彼と至近距離で目が合う。
「俺と、付き合わない?ほっとけない。近くに、俺の目の届くところにいてほしいんだよね。」
切れ長の瞳がまっすぐに私を見ている。
「あ…あの…わたし…」
動揺で言葉がうまく出てこない。ただ、今の一瞬で酔いは全部どこかに吹っ飛んでしまった。
動けないでおろおろしている私を見て、彼はフッと笑うと優しく髪を撫でる。
「急にごめんね。なんか、我慢できなくなってた。でも、冗談とかじゃないから、考えといて。」
なんとか小さい声で、「はい。」と呟くと、彼は満足そうに微笑んだ。
そこからは、酔いが覚めた私はもう大丈夫だからと帰る旨をシャキッと伝え、足早にその場を去った。
心配だから帰ったら連絡を、と言われて、帰宅と同時にメッセージを送った。
彼からの返信の「またね。」という最後の一言にどうしようもなくドキドキしてしまった。
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作者名:kainaniak2 | 作成日時:2019年7月21日 1時