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急いで階段を降りていたので、前に誰か居る事に気づかず___
「わっ!?」
「!・・・すみません」
どうやら烏丸君とぶつかってしまったようだ。
烏丸君が受け止めてくれた。紳士だ。
そこで私は違和感に気づく。
「___兄さんの、匂い・・・?」
「あ、これ迅さんに貰った服なんです。迅さんの先輩が着ていた服だって言ってました」
確かに烏丸君が来ていた服は、兄さんが着ていた服だ。
だから嗅いだことのある匂いだと思った。
「・・・私の許可無しに勝手に・・・!」
「あ、ダメだったんですか?返しますよ」
「・・・いや、大丈夫だよ」
私が持って帰っても着ることはないだろう。だって男性物だし、私が着たらぶかぶかなのは目に見えている。
ならば、目の前にいる彼に着て貰った方が、私としては嬉しい。
「実は俺、家が結構貧乏で。だから、服は迅さんのお下がりを貰ってて」
「そう、だったんだ・・・。なら、兄さんの服で気に入った物全部あげるよ。そのほうが、兄さんも喜ぶよ」
処分しちゃったら、思い出も一緒に消えちゃう気がして、なんだか嫌だった。
だったら、烏丸君が着てくれるほうが全然良い。
「すみません・・・」
「そういうときはね、謝るんじゃなくて、お礼を言うんだよ」
烏丸君の目が見開く。
この言葉は兄さんが言っていたこと。
・
『これ・・・!』
『前に一緒に買い物に行ったときに、見ていたから欲しいのかなって思って』
父さんが病に倒れ、兄さんはモデルの仕事で家計を担っていた。
だから、欲しいものは自分が働いてから買おうと思っていた。
でも、兄さんにはばれていたみたいで。
『・・・ごめんなさい』
私は兄さんに余計な気を使わせてしまった、と謝った。
でも、兄さんは___
『A、俺は謝って欲しいんじゃない』
『え・・・?』
『俺は感謝の言葉が欲しい。それに、俺も色違いを買ったんだ』
ほら、と眩しい笑顔を見せながら、兄さんは私が欲しかった物の色違いを持っていた。
『・・・ありがとう、兄さん・・・!お揃いなんて、すっごく嬉しい・・・!』
『俺もだよ。これが、俺たちがずっと兄妹だっていう“証”』
___兄さんが買ってきてくれたもの。
それは、白い羽根のイヤリングと、黒い羽根のイヤリング。
私の右耳___
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恵野(プロフ) - functionさん» コメントありがとうございます!あ、アドバイスですか!?原作の設定をしっかり理解出来ているなら、大丈夫だと思いますよ!差し支えなければ、貴方様の作品を見に行かせて頂いてもよろしいでしょうか?陰ながら応援してます! (2020年5月24日 17時) (レス) id: d3fd993259 (このIDを非表示/違反報告)
function - とてもおもしろいです!引き込まれます♪私もワートリの二次創作小説を書いているのですが、何かアドバイスいただけないでしょうか。 (2020年5月24日 17時) (レス) id: a26c61826f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:恵野 | 作成日時:2019年3月3日 19時