3 【過去のトラウマ】 ページ5
幼いA視点――――――――
「チッ、不気味なんだよッ!」
『大変申し訳ございません』
「だーかーらァ、それがキモイんだぜ!」
今日も、この館のご主人は私に怒る。
メイドというのは、こういうコトなんじゃあないのか。
私は考える。
だが、私は理解不能であった。
「テメー新入りだよな?笑うってコトができねぇのか?あ??」
『できません』
「………ッ、そうかよ」
幼いころから言われてきたこの見た目。
「悪魔」
「死神」
「妖怪」
この黒髪と。
ダークな瞳のせいなのだ。
人の喜びを、自分の幸福へと変える……
メイドもそうであろう。
だがしかし。
私には、そんなコトはできなくなっていた。
それどころか。
感情というものさえも、どこかへ置いてきてしまったのだ。
『お掃除しにまいりました』
「うっせぇ!他のメイドに任せる」
『かしこまりました』
ドアを開けて出ようとしたら、思いっきり何かを投げられた。
一生懸命くんだ水の入ったバケツだ。
「びしょびしょの床、拭いてお前の今日の仕事は終了だ」
『…………………………かしこまりました』
白い買ったばかりの雑巾で床を丁寧に拭く。
ご主人は、私に聞こえるような舌打ちをして部屋を出て行った。
「見てあれ」
「あぁ、アイツ?」
「まじキモイんですけど〜」
他のメイドからの嫌がらせも始まるようになった。
今日はトイレの水を頭から豪快にかけられた。
明日もそうだろう。
だが、私には心なんて存在しない。
心がないからこそ生きていける。
辛い。
悲しい。
ムカつく。
怖い。
その感情がないから私はやっていける。
――――――――そう、思っていた。
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