包帯無駄遣い装置の妹さん 7【文スト】

No.300 ページ9

芥川が地を蹴ってその場から離れると同時に、二頭の獣の形をとった羅生門がフィッツジェラルドへと襲い掛かった。



フィッツジェラルドはそれを両手で押さえ、羅生門の勢いで後ろへ滑りながらも受け止める。



途轍もない剛力に、芥川が瞠目する。



次の瞬間、強く地面を踏み付けたフィッツジェラルドは芥川の腹部に拳を叩き込んだ。



芥川の口から血痕が吐き出される。



そしてフィッツジェラルドは、大きく振りかぶった足で芥川を蹴った。



彼の体は勢い良く壁へと叩き付けられる。





「く……」





大きく罅割れた壁を背にした芥川は無理矢理にその体を起こす。



その様子にフィッツジェラルドは余裕そうな笑みを崩さずに云う。





「なかなか頑張るな……ところで、俺の成功の秘訣その四＿＿＿＿聞きたいか？」



「要らぬ」





芥川は大きく開かれたその目でフィッツジェラルドを睨んだ。





羅生門＿＿＿＿黒羽濤!!





外套が幾数もの波の形を取り、フィッツジェラルドに向かって伸ばされる。



フィッツジェラルドは不敵な笑みを浮かべると、新たに有価証券を取り出した。





「五十万ドル」





そして、白鯨は揺れた。

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