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No.301 ページ10

白鯨の内壁には無数の罅が走り、壁の欠片が小さな音を立てる。



満身創痍といった様子で壁に凭れる芥川は、それでも尚殺意を宿す漆黒の瞳をフィッツジェラルドに向けている。



それを物ともせず、フィッツジェラルドは広げた指を鳴らしながら笑った。





「秘訣その四『ただ強者たれ』。金と権力、異能に地位。強さの種類は一つではないが……まぁ、俺のように全て持つのが無難だな」





そう芥川に云い、ふと視線をずらした彼は目を見開いた。





(虎人(リカント)が居ない……!?)





力無く地面に伏していた筈の青年が、忽然と姿を消していた。



そして、その状況をフィッツジェラルドが理解したと同時に、彼の背後から敦が飛び掛かった。



敦は右腕をフィッツジェラルドの首に回してしがみつく。





「ぬ……っ!」



「何が強者だ!金や異能は地上の街を吹っ飛ばす為にあるんじゃない!人の強さは悲しみの淵で藻掻く人に差し伸べるためにあるんだ!」






敦は吠えた。



彼は、かつて武装探偵社の人々に手を差し伸べられたからこそ、此処に居る。



若しその手を取る事が出来なければ、今頃自分は害獣として捕まっていただろう。



彼等は強く、そしてその力を守る為に使っている。



そんな彼等に憧憬を抱き、自らもそう在りたいと願った。



だからこそ、敦にフィッツジェラルドの思想を否定しないことは出来なかった。



力が込められた虎化した腕を、フィッツジェラルドの右手が掴んだ。





いかにも(・・・・)な誤解だな」





瞬間、フィッツジェラルドに腕を抱え込まれた敦の体が宙で弧を描き、その背は勢い良く地面へと叩き付けられた。

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(プロフ) - 仍さん» お祝いのお言葉有難う御座います!このシリーズでも楽しんでいただけるよう頑張らせていただきます! (2019年8月11日 18時) (レス) id: d2f0ba7099 (このIDを非表示/違反報告)
- とても、遅くなりました!続編おめでとうございます! (2019年8月11日 18時) (レス) id: 748d83af02 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - りんさん» コメント有難うございます!そして祝ってくださり有難うございます……!続編でも楽しんでいただけるよう頑張らせて頂きます! (2019年7月19日 23時) (レス) id: d2f0ba7099 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 続編おめでとうございます続き楽しみにしてます (2019年7月19日 23時) (レス) id: bd39a087a2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年7月19日 23時

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