【カケ"フ°ロ】目を/に「うつす」話『サマータイムレコード』【二次/夢主】 (ページ35)

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33.「サマータイムレコード　side赤&黄緑」ページ35

三人称side

メカクシ団の全員が寝静まった頃。シンタローだけは、一人でただ虚空を見つめていた。
遥「どうしたの、シンタロー君」
ｼﾝﾀﾛｰ「！…すいません、起こしました？」
対して遥は、
遥「大丈夫だよ。それよりシンタロー君、寝付けないの？」
逆に労る様な言葉を掛けた。
ｼﾝﾀﾛｰ「はい…何か、色んな事が頭ん中ぐるぐるして…」
遥「僕で良ければ話を聞くよ。僕も誰かと話したい気分だしね」
ｼﾝﾀﾛｰ「ありがとうございます。ああでも、ここじゃない所がいいっすね」
微笑んで、遥は言う。
遥「それなら、良い所を知ってるよ」

ｼﾝﾀﾛｰ「ここは？」
遥「僕のお気に入りの場所だよ」
そこは、ある雑居ビルの屋上だった。
爽やかな夏の風が服を遊ばせ、蝉の声が酷く耳障りに聴こえる。シンタローが「良い所ですね」と言ったきり、二人は押し黙ってしまった。

暫くの時間が経った後、遥が徐ろに口を開いた。
遥「寝て起きた後にさ。一瞬、どうしてこんな見覚えのない所にいるのかな、って思ったんだ。今もそうだよ。少しずつ、何かが抜け落ちてく感覚がある」
ｼﾝﾀﾛｰ「…オレも、似たような事を考えてました」
遥「忘れるって事は、忘れられるよりも寂しいんだね」
言う事と裏腹に、遥は淡々と話す。
シンタローは、暫く考える素振りをしてから、はっきりと言った。

ｼﾝﾀﾛｰ「…いや、大丈夫っすよ、先輩。少なくとも、オレだけは」
それだけで、遥は合点がいった。
遥「…ああ、そうだね、その為の能力だもん」
ｼﾝﾀﾛｰ「はい。先輩が忘れても、何度でもオレが話をします」
自信を持って、シンタローは断言した。
遥「そうだね…僕、いつか皆との思い出を、絵に描いてみたいな。シンタロー君はとびきりかっこよくね」
　シンタローは苦笑しながら、良いと思いますよ、とだけ言った。
遥「シンタロー君は曲でも作る？僕、貴音…ううん、『エネ』から聞い…」
ｼﾝﾀﾛｰ「先輩！？何言って…アイツ、…」
　途端に慌てふためくシンタローに、遥は柔らかな笑顔を向ける。
遥「どんなに下手でも良いんだよ。
皆、笑ったりしない」
　そうっすかね、と乾いた呟き。
遥「勿論。皆、泣いて喜ぶよ」
ｼﾝﾀﾛｰ「オレ、乗せられやすいんすよ？」
遥「大歓迎だよ。もしその時は、僕がタイトルを付けたいな。こう見えて僕、ゲームのタイトルを付けた事もあるんだよ？」
ｼﾝﾀﾛｰ「ああ、あの時の…アテでもあるんすか？」
　そうだよ。遥の静かな口調には、今までの全てが籠っている様だった。

『サマータイムレコード／エネミーオブネイチャー』