第四十三話 ページ47
「あのね、ケンジロウ…さん、にも、協力してほしいの、です」
丁寧語に慣れないのか、しどろもどろになるマリー。
「やめろやめろ。敬語なんてガラじゃねぇ…それにお前の方が年上じゃねぇか。
それで、協力っつうのは『アレ』を使いたいって事だよな?」
「うん…私、使い方分からないから」
「分かった分かった。使うのは『覚める』だけか?」
「うん」
そうか、と言いながら、ケンジロウがひょいひょいと手招きのようなジェスチャーをする。どうやら蛇の脱け殻を寄越せという事らしい。少し遠いので大変だが、なんとか手渡す。
「多分、向こう側で半月位は掛かるだろうな。それにマリー、お前にもする事が沢山あるんだぞ?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。話が見えないんだが…『アレ』って何だ?」
意図的に隠されているようで気になる。ごめんね、と、またマリーが笑った。
「あなたを…『見張る』を作る時に使ったの。蛇の力を強くして、一部分を切り離すっていう…機械、かな」
「じゃあ…私の事、ずっと、知ってたのか」
自我の発露を奪われた哀れさも?
ごめん、と目を伏せつつマリーが言う。
「いや、良いよ。咎めたい訳じゃなし…それよりも、私と、その、ドールは離れられるのか?それと、半月もマリーが居なくて怪しまれないのか?」
「ミハルちゃんとドールちゃんはきちんと離れられるよ」
自由自在、と表情を戻しつつマリーが笑う。でも…と、時間の事についてだろう、少し考える仕草を見せた。
「それなら、私に考えがある」
アザミが言う。何々、とマリーと共にそちらを向いた。
「その機械をこちらに持って来られればだが。
こちら側で全て済ませてしまえば良い話なのではないか?腹は減らないし快適だし、時間的な意味でもあちら側に影響しない」
少し狭苦しいが、と苦笑している。
「良いアイディアなんじゃねえか?こいつらはここに転がしとくのも何だし、俺がどうにかするさ」
「…出来るのか?」
「もちろん!」
応えたのは明るいマリーの声だった。その目が輝いていた。釣られて私も少し笑う。
すると、急に会話に闖入する声があった。
「待ってくれ。一体何がどうなってるんだよ?」
むくりと起きる影。シンタローが気絶から回復していた。
と、思う間もなく、シンタローがまた倒れる。
「…ごめんね、シンタロー」
そう言ったのは、案の定マリーだ。
「どうして?」
マリーは愉しげに微笑んだ。
「皆をびっくりさせたいんだ」
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作者名:一夏 白 | 作成日時:2017年10月12日 7時