検索窓
今日:14 hit、昨日:2 hit、合計:1,224 hit

第四十二話 ページ46

「『冴える』は、もうずっと寝てる。しばらく起きて来ないと思う」
 出し抜けにマリーが語る。苦笑しつつ、ケンジロウが訊ねる。
「しばらくってなぁ…どのくらいだ?」
「うーんと…5、60年か、もうちょっとかな」
 ははは…と乾いた笑いが漏れた。スケールが違ぇよ。
「元々、私が少しずつ色んな蛇の力を貰って…それごとに、『冴える』も強くなっていったらしいの。でも…私、やっぱり皆にぜんぶ返さなきゃ。私が貰ってたって何にもならないんだもん」
 小さくはにかむその顔には、ほんの少し、ばつの悪さみたいな物が混じっていて。柄にもなく、「合体させる」の暴走がマリーの傷になっていなければ良いな、と思う。
「マリー。これから、どうするつもりだ?」
 アザミが、先程私に訊いたような事をマリーにも質問する。
「ちょっと前に言った通りかな。全部、諦めたくない。叶えて欲しい…ううん、
叶えるのは、私なの」
 真っ直ぐに私を見据える目は、淡い桜の色だ。いや、質問した相手の方を向くべきだろうに、とアザミを見る。或いはそれは気恥ずかしさから逃れる口実だったのかも知れないが、アザミは満足そうに頷くばかりだった。
「それでも、皆の力を貸して貰わなきゃだけどね」
 言葉とは裏腹に、マリーは珍しく眉を吊り上げ、自信たっぷりな様子だ。ふんっ、と鼻息まで吐いている。
「でも、どうやって…?」
「『覚める』の力を使うの」
 確か、「覚める」は、エネの能力だった筈だ。という事は、
「…電脳化?」
 それを色良い反応と受け取らなかったのか、途端に不安そうな顔になるマリー。
「や、やっぱり…本当の身体があった方が、良い?」
「…いや。それはエネさんに失礼だし…私は、元々はメカクシ団の皆とおしゃべりがしたかっただけだからな」
 ぎこちなく、笑う。目の前に手本のようなそれがあるから、否応なしに自らの不恰好さを自覚してしまう。
「よいしょっ、と」
 マリーがポケットから蛇の脱け殻を取り出して、
「お、おいマリー!何処からソレを出したっ」
 アザミが面白い位に狼狽えた。その声を全く意に介さず、マリーはその脱け殻をじっと見つめている。やがてその両目が赤く染まり、また薄いピンクに戻った。
「出来た!」
 マリーがその脱け殻を渡して来る。妙に重い。原因は分かっている。私もそれについて得意気に説明したものだ。
「『覚める』が入ってるのか」
「正解!」

第四十三話→←第四十一話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:カゲプロ , 二次創作 , 夢主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:一夏 白 | 作成日時:2017年10月12日 7時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。