【カケ"フ°ロ】目をみはる話【二次創作】 (ページ11)

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第九話ページ11

「へぇ！？そんなことがあったんすか！？」
　仕事上がり、いつものつなぎ姿のセトの反応を聞いて、僕はつくづくセトのことを「良い奴」だと思う。
「かくかくでね…」
「しかじかでだな…」
と入れ代わり立ち代わりに事のあらましを話す僕とキドにいちいち相槌を打ってくれるのだ。
「つまり、俺達はドールさんの歓迎会を兼ねてこれからどこかへ行く。そのために迎えに来てくれたって事っすね。遊園地っすかね？」
最後にセトがまとめたので、僕はこくこくと頷いておいた。
　それから、キドが一人で先頭、後ろに僕とセトが並んで歩き出す。
「いやぁ、楽しみっすねぇ。人が増えるのは嬉しいっす」
　セトは爽やかに笑っている。僕は少しだけ意地悪がしたくなった。
「本当に？前に人が増えたときはあんなことになったのにさ」
　前を歩いていたキドがこちらを睨む。未だにその話題が憚られるのは少し憎かった。
「んー…俺自身は、特に嫌だとかはないっすかね。賑やかなのは良いことっすし…姉ちゃんは、喜んでるんじゃないすか」
　セトは、普段とぼけているくせ、こういうとき核心を突いてくる。
　そりゃあそうだ、姉ちゃんが嬉しいことは僕たちだって嬉しい。
「そうだな。ドールさえ良ければ、俺達の方は賑やかであるほど楽しいんだから」
なんてキドも同意する。
「ドールちゃんは、多分セトが見たらびっくりするよ。本当に無表情なんだから」
　負け惜しみに僕が言った。だけどセトは、
「楽しみっす！」
などと抜かす。敵わないなぁ。
　「意地悪言ってごめんね。僕も、結構…色々、楽しみにしてるんだ」
　とりあえずの所、僕はセトに対して白旗を揚げた。
　先頭のキドが、赤信号でぴたりと止まる。合わせるように、僕とセトとが横並びになった。
　三人きり、というのが、107号室の頃を思い出させる。
　キドは、セトは、僕は、三人で青信号を待っていた。