story.40 ページ41
「……A、カノ、本当に今のままでいいのか？」
まともに謝ることすらできなかった私達に、キドははそう問いかけた。
何があったのかは、キドもよくは知らないだろう。私が言った、『あの時』がお化け屋敷の後であることも、説明していないままだ。
でも、同じアジトで暮らしていく以上、顔を合わせないでいるわけにもいかない。それくらいは分かっているつもりだ。
「「……え」」
「今のままって……あ、ごめんね……食事とか運んでもらっちゃってるし、自分で取りに行＿＿」
「そうじゃない、Aとカノについてだ」
「何も問題ないよ〜？ね、A？」
もう懐かしく感じてしまうその声。
久しぶりにカノに名前を呼ばれ、こんなときでも何故か嬉しいと思ってしまう自分がいる。
からかわれてもいいから、また前みたいに話したい、そう思っているのに何も言えない私は全然強くなんかない。
「うん……そうだね、カノ……」
久々にカノの名前を呼ぶ私の声は少し震えていたような気がした。
「カノ、お前も何か悩んでるだろ」
え、カノが……？何を……？ああ、やっぱり私が能力使っちゃってるから……
「え〜、やだな〜、誤解だよ誤解！」
そう言うカノは、いつもと比べてもなんの違いも感じられなかった。
さっき私が能力を使ったときに感じた自分が蝕まれていくような感覚。あれをカノがいつも味わっているのだとしたら。
『Aも隠してばっかりじゃ見失っちゃうよ』と。カノが言った言葉を思い出す。
本当のカノが、私には分からない。
どこまでが嘘なのか、私はまだ何も分かってない。
でも、今分からないなら、これから分かればいいじゃないか。
カノが見失った、『本当の自分』を私は無くしちゃいけない。
私が本当のカノを絶対に見つけ出すから。
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作者名：夜桜
作成日時：2017年9月24日 0時
