今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:46,964 hit
小｜中｜大
38.story ページ39
珍しくAがリビングに来た。僕は、雑誌を持ったまま目線だけでAを追う。
「Aさん、大丈夫っすか？もし辛くなかったらっすけど、たまには来た方がいいっすよ？」
「そうだよ……たくさんお話出来たら楽しいから、ね？」
Aがキドに手渡された水を飲んだ後、声をかけたのはセトとマリーだった。
「……うん。そうだね……。ありがとう。私は全然元気だから、心配しないで」
そういうAの声は悲しげで、前みたいに『冗談だよ！』と笑って誤魔化すことすらしなかった。
「無理してないで、ちゃんと吐き出した方がいいっすよ？」
こんな時も、やっぱりセトは頼りになる。きっと、そうやって優しく声をかけてAの心を救ってくれるんだろう。マリーを連れてきた時みたいに。
「大丈夫、無理なんかしてないよ……！」
「じゃあ、フードとってちゃんと顔あげるっす」
セトがAのフードを取る、その瞬間、目の奥が熱くなるのを感じた。
Aが『欺く』を発動させたんだろう。僕の中の能力が強制的に引き出される。
僕は、自分自身の姿を変えることしか出来ないが、Aの能力が合わされば話は別だ。
近くの物、回りの景色、更にはこの世界の全てを嘘で覆ってしまう事だって出来るだろう。しかし、今回は自分自身にしか反映されていないらしい。
横目でAを見ると、久々に見る、いつもの笑顔を浮かべていた。
嘘で出来た笑顔を見て僕が感じたのは、『悔しさ』だった。僕みたいになってほしくない、自分を見失ってほしくない、そう思っていたのに、僕はAを守れなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 50人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夜桜
作成日時：2017年9月24日 0時
