27.story ページ28
「な〜んてね!私がこんな弱いわけないじゃん!私が本当にこわがりだとでも?」
涙声なのを隠した明るい声でAは笑った。
「……え?」
弱いわけ、あるじゃん。怖がりじゃん。本音を言うのも怖いの?だから隠すの?そうやって誤魔化して……
「あっ、もしかして騙された?いや、私が本当に泣くと思っ__」
……そうやって本当の自分を見失っていくんだよ。
「嘘つき……」
自分が分からなくなったら、もうどうしようもないんだよ?
「いや〜、ごめんごめん!」
違う、違う、違う。そうやって取り繕わないで。Aが本音を隠そうとするところなんて、そのまま自分を失うところなんて、見たくない。
「それが嘘なんでしょ?」
僕がそう言うと、Aは一瞬驚いたような顔をした。
「カノ、何言ってんのさ……」
Aが疲れたような声でそう呟く。
「Aも、そうやって、隠してばっかりじゃ、見失っちゃうよ……?」
ああ、何で今まで気が付かなかったんだろう。A、僕にそっくり。だから、これ以上僕みたいにはなってほしくない。
「え……見失うって……」
「本当の自分が分からなくなったら……」
「ああ、分かった……。あの、さ……。カノ、なんでしょ?……自分を見失ったのは。だから、言うんだよね……」
「それは……」
あれ、立場逆になってない?本当の僕、なんてとっくにいないのにさ……。
「私は平気だよ。本当の自分なんて、消しちゃいた__」
途中まで言って、ハッと口を止めた。『本当の自分を消しちゃいたい』…?
「消しちゃいたいって……」
「え?いやぁ、冗談冗談!」
「……またそうやって隠すの?」
「本当の私は__」
聞きなれた声に、Aは言いかけた言葉を飲み込んでしまった。
声の主は、シンタロー、キド、セトの三人。
「お化け屋敷行ってきたよ!結構楽しかった!」
Aはまた、そうやって嘘をつきながら三人の方へ駆けていった。
50人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夜桜
作成日時:2017年9月24日 0時