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「……そっかぁ。いやぁ、入団初日からテロとか……大変だったねぇ、ほんと」
事の顛末を聞いたカノは大袈裟に肩をすくめてみせ、首を振った。
十億円を要求したというテロリストの言動もさることながら、こいつの大袈裟さ加減も負けちゃいないとわたしは思った。
「あ、ごめん!自己紹介まだだったよね。たぶん」
カノを完全に無視し、わたしはなんとなく背筋をピンと伸ばして話し出す。
「わたし、団員No.5、Aだよ。今からちょうど1年前くらいにメカクシ団に来たんだけど……そうそう、わたしもモモちゃんと同じでね、キドに拾われたんだ」
あの雨上がりの夕暮れを思い出して、笑いそうになる。
実に突飛な日々の幕開けは、思えば随分突然だった。
「おおお……!だとしたら運命的かも!!……って、たはは……ほら、私とAちゃんがここで出会えたのって、まるでそう決まってたみたいっていうか……」
「まぁ、たぶんキサラギちゃんはAちゃんと違って道端に寝っ転がってた訳じゃないと思うけd痛い痛い!!」
懐かしさは一瞬で引っ込んだ。
カノの手の甲に爪を立てたわたしはそのまま力任せにつねりあげる。
「こっちが、バカ。団員No.3」
「せめて“ノ”付けてよ!?それもはや名前じゃないよね!?ってかちょ、ギブギブギ ブ!!」
いつの間にか茶番劇を眺めるような眼差しになってしまったモモちゃんの視線から逃れようと、わたしはカノの手を打ち捨ててずんずんとベッドの枕元に向かった。
デパートのセキュリティシステムをハッキングし、人質の閉じ込められたフロアーのシャッターを開けたという、“エネ”ちゃん。
初めに聞いたときはどんなサイバーオタクが居合わせたんだ、と思ったけれど、どうやらそういうことではないらしく……彼女はモモちゃんのお兄さん、ジャス子、もといシンタローさんの携帯に住み着いた“電脳少女”らしいのだ。
そのエネちゃんを一目見たいと思っていたことすら忘れていたわたしは、湧き出す好奇心に背中を押され、枕元に畳まれた赤ジャージの上の携帯を覗き込んだ。
「…………ん……?」
ディスプレイの中に青色が横切るのを見たその瞬間、シンタローさんがぱちりと目を開けた。
「……どこだよ!!ここ!!」
叫んだシンタローさんが起き上がれば、
“ゴッ”
「「いいっだぁぁぁぁ!!!」」
頭がぶつかり合うことなんて、わたしには当然わかっていた。
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操 - また付け足し。まどマギ知っていて嬉しかったです (2014年11月1日 8時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
操 - いえ、面白いので。私人に嫌な言い方するときがあるんです。すみません (2014年11月1日 8時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 操さん» 返信遅れてすみません! たぶん目覚めのシーンとかですよね。 アニメの第十話、確かに意識したので……不快にさせたようならすみません。 似ていないところもたくさんある……はずなのでこれからもよろしくお願いします!コメントありがとうございます! (2014年10月31日 23時) (レス) id: 4032ac221f (このIDを非表示/違反報告)
操 - 付け足し。余計な事言ってすみません (2014年10月30日 19時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
操 - 失礼します。まどマギの小説に似てる (2014年10月30日 19時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼方 x他1人 | 作者ホームページ:http://s.ameblo.jp/mimio-oshiman/
作成日時:2014年10月6日 13時