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「皆、大丈夫!?」
アジトの扉を開けるなり、わたしはキドたちに駆け寄った。
カノは別に駆け寄らず、歩いて寄った。
びっくりしたように台所からこちらを振り向いたキドは、しばらくわたしを見て、それから頷いた。
「あ、あぁ……。悪かったなA、心配を掛けたようで。特には問題はない」
「そっか……」
よかった、とまず感じた。
喉の辺りに詰まっていた息を吐き出す。
誰も危険に苛まれることなく、帰ってきてくれたのだ。
そうわかったら、安心した。
「いやいや……でも流石にちょっとびっくりしたなぁ�・。まさか買い物に出かけてテロに巻き込まれるなんて思わないもん、普通」
カノが両手をひらひらと振ってみせ、何でもない風に言った。
でも、それは───少なくとも、一般的に考えれば───何でもない訳がない。
酷く突飛な話。突然聞いた事件の話に、たぶんわたしは、知らない国の言葉を聞いて、戸惑っている風でもあった。
そう───時は2時間ほど前に遡る。
わたしとカノの元に、一通のメールが届いた。
それはまるでキドの几帳面な性格を表しているかのように、とても長い文面だったけれど……要は、こういうことだった。
《マリーとキサラギと、三人で出かけた先のデパートで、テロリストの立て籠りに巻き込まれた》
《咄嗟の判断で【目を隠し】、犯人たちの撃退法を考えることにした》
そして、
《実はこのフロアにキサラギの兄貴がいるらしい。まったくの偶然だ》
その彼も、キサラギちゃんも、今、ここにい る。望めば会うことができる。
そう考えただけで頬が緩んだ。
前の世界にはなかった出会いに、胸を踊らせていた。
(あの日のように、あの黒色の彼に、殺されるために導かれた……そういう運命なんじゃないかな。 もしかして、これは)
そんなことを考えていたわたしは嘘みたい に、今度は新しい出会いに期待を抱いていた。
まるでその陰に隠された……否、自分から隠れてしまった“悲劇”から、さっと目を逸らすかのように。
「じゃ、行こっか、Aちゃん。きっと奥の 部屋にいるよ」
わざとらしいまでの笑顔をみせるカノに、愚かにも不自然さを感じなかったわたしは、当然のように頷いた。
「……カノ、新しい仲間が増えたこと、嬉し い?」
カノはわたしに振り向く。
「うん。嬉しいよ?」
そんな嘘を、わたしは彼に、吐かせた。
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操 - また付け足し。まどマギ知っていて嬉しかったです (2014年11月1日 8時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
操 - いえ、面白いので。私人に嫌な言い方するときがあるんです。すみません (2014年11月1日 8時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 操さん» 返信遅れてすみません! たぶん目覚めのシーンとかですよね。 アニメの第十話、確かに意識したので……不快にさせたようならすみません。 似ていないところもたくさんある……はずなのでこれからもよろしくお願いします!コメントありがとうございます! (2014年10月31日 23時) (レス) id: 4032ac221f (このIDを非表示/違反報告)
操 - 付け足し。余計な事言ってすみません (2014年10月30日 19時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
操 - 失礼します。まどマギの小説に似てる (2014年10月30日 19時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼方 x他1人 | 作者ホームページ:http://s.ameblo.jp/mimio-oshiman/
作成日時:2014年10月6日 13時