2>side:シンタロー ページ4
それは、昨日のことだった。
キドから少々面倒な買い出しを頼まれた俺とカノは、わざわざ隣町の大きなショッピングモールまで出掛けていた。
「あぁ……あちぃ……だりぃ……もう帰りてぇ」
「シンタロー君ってほんと筋金入りのヒキニートだよねぇ。帰りたいって言うんならほら、今すぐ立ち上がって駅まで走る?」
「……お前なぁ」
そんなことを無遠慮に口にしながらくっくっと笑うカノの横で、俺はテラスのベンチにへたりこんでいた。
「まぁ、シンタロー君がだるいって言うのも解んなくはないけどね」
頭の後ろで手を組み、身体を反らせたカノのポケットからひらりと飛んだメモには、キドの几帳面な字で『シ●バニアファミリー りんごの木のあるきれいなお家』と書いてあった。
何もかもがものすごくミスマッチだ。
「でも仕方ないよ。マリーの珍しいおねだりだもん」
「お前はいいよなそれで……俺もう二回目だし……(カゲロウデイズ公式アンソロジーコミック-SPRING-参照)」
そう、俺たちの住む町の“あのデパート”でも売り切れていたこのお家を、いい年した男二人で買いに来たというこの気持ち悪い状況が、悲しいかな、俺の現状の全てなのだ。
三人掛けくらいの大きさのベンチに座る俺とカノの間には『シルバ●アファミリー りんごの木のあるきれいなお家』が堂々と鎮座していた。
「せめてこの場にマリーがいればここまでシュールな画にはならなかっただろ」
「たぶんこの場にマリーがいたらシンタロー君より先にダウンしてただでさえデカい荷物がさらに増えるだけだよ……ってシンタロー君、もしかしてこの間の遊園地でついにロリコンに目覚めた!?またおんぶしてあげたくなっちゃったとか?いやぁ〜そうならそうと言ってy「もうお前黙れ……マジで……もう……」
背中をバシバシとやけに楽しそうに叩くカノに、もう反抗の意志さえ失いながら、俺は力なく首をがくりと折った。
あぁ、せっかくの夏、いったい俺は何をしているんだ。
海だの何だのというような我儘を言うつもりはない。せめてもっと、こう……ひと夏のアバンチュール的な……。
「───きゃあっ!?」
と、その瞬間、俺のすぐ頭上で短い悲鳴が響いた。
「え?」
とっさに顔を上げた俺の目の前には、驚いたように目を見開いた少女の顔。
どうやら人にぶつかられてよろめいたらしいその少女は、こっちに倒れそうになっているらしかった。
これは。
フラグか?
フラグなのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
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操 - また付け足し。まどマギ知っていて嬉しかったです (2014年11月1日 8時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
操 - いえ、面白いので。私人に嫌な言い方するときがあるんです。すみません (2014年11月1日 8時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 操さん» 返信遅れてすみません! たぶん目覚めのシーンとかですよね。 アニメの第十話、確かに意識したので……不快にさせたようならすみません。 似ていないところもたくさんある……はずなのでこれからもよろしくお願いします!コメントありがとうございます! (2014年10月31日 23時) (レス) id: 4032ac221f (このIDを非表示/違反報告)
操 - 付け足し。余計な事言ってすみません (2014年10月30日 19時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
操 - 失礼します。まどマギの小説に似てる (2014年10月30日 19時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼方 x他1人 | 作者ホームページ:http://s.ameblo.jp/mimio-oshiman/
作成日時:2014年10月6日 13時