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* * *

わたしは、不思議な世界に立っていた。

薄暗い裏路地のような場所。
細い道はいくつかの背の高い建物に挟まれていて、時折不気味にひやりとした風が吹き抜ける。

てらてらと光る、外国のような街灯は、わたしの頬を薄いオレンジ色に染めてみせた。

(……ここは?)

と、そのとき、

「…………ひっ!!」

たくさんの何かが、街灯に照らされて一斉に蠢いた。

目を凝らして見えてしまったものは、たくさんの人の影。

そこには人なんて一人もいないのに、道端からすうっと立ち上がった影が、ずるずると音を立てながら近づいてくる。

どうしようもなく目を見開いて、そこから逃げ出そうと足を踏み込んだ、そのとき。

『…………てほしい』

「え……?」

耳に届いたその声に、思わず立ち止まって振り向いた。

その瞬間、

『…………が欲しい』『…………てくれ』『…………がしたい』『頼むから…………を!』『…………!お願いだから!』

頭が割れそうなほどに鳴り響いたたくさんの“願い”が、ビンビンと鼓膜を震わす。

「…………!!!」

とっさに頭を振り振り、うずくまった。

どう見たって影の口は動いていない。

ただただ蠢いている、それだけのはずなのに。

「……どうして……やめて! やめて!!」

叫んだ瞬間、バツンと音を立てて、揺らめいていた街灯が消えた。

……いや、街灯だけでなく、周りにあった建物も、影も、自分の伸ばした指の先さえ見えない、深い深い暗闇。

何なのここ、と叫ぶも、その声すら聞こえない。

「願いが聞こえただろう? 数え切れないほどの、死に物狂いの“望み”が」

突然、耳元で声がした。

シュルシュルと、笑うような、蛇が舌なめずりをするような、そんな音を交ぜながら。

「願いは、叶わないから生まれるのさ。叶うものなら、初めから強く何かを想うなんてことは必要ないだろう?」

……でも、もう二度とお父さんみたいに、叶わない願いに苦しむ大切な人をみたくなんてないの。

「だから君が叶えるのさ。その命と引き換えにしてでも叶えたい、大きな望みを見つけたときに」

わたしが? ……命と引き換えに?

「そうだ。それこそ、君の望みでもあるだろう」

意識が不意に、ゆらりと融けていく。

最後に一言だけ、シュルシュルという音とともに、その言葉が脳裏に焼き付いた。



「奇跡を起こせ───目にもの見せるのだ、小娘」



* * *

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- また付け足し。まどマギ知っていて嬉しかったです (2014年11月1日 8時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
- いえ、面白いので。私人に嫌な言い方するときがあるんです。すみません (2014年11月1日 8時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 操さん» 返信遅れてすみません! たぶん目覚めのシーンとかですよね。 アニメの第十話、確かに意識したので……不快にさせたようならすみません。 似ていないところもたくさんある……はずなのでこれからもよろしくお願いします!コメントありがとうございます! (2014年10月31日 23時) (レス) id: 4032ac221f (このIDを非表示/違反報告)
- 付け足し。余計な事言ってすみません (2014年10月30日 19時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
- 失礼します。まどマギの小説に似てる (2014年10月30日 19時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:彼方 x他1人 | 作者ホームページ:http://s.ameblo.jp/mimio-oshiman/  
作成日時:2014年10月6日 13時

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