第13話 ページ14
「帰ってきたら今後の事を話そう。達者でな」
『はい…色々とありがとうございました！』
「あぁ。気をつけて行ってこい」
『はい！』
ペコリとお辞儀をして、シュウジさんに背を向けて船へと向かった。
船内に入る前に、もう一度振り返って、まだその場に立っているシュウジさんに小さく手を振る。乗組員にチケットを渡すとちょうど出港の時間になり、船と陸地をつなぐ道が絶たれる。船が動き出し、私はシュウジさんの姿が見えなくなるまでデッキから港を見つめていた。
――――――――――
『うっ…』
数十分後、デッキから海を眺めていたら吐き気がして、その場に座り込んだ。何かが込み上げてくる感覚を飲み込んで、必死に抑えた。
現在、緊急事態が発生中。船酔いを起こした私はかなり具合が悪かった。
島に到着まで1時間ほどでそんなに遠くないらしい、と聞いていたので海を眺めていたら吐き気に襲われた。足元が覚束ないから立っているのは危険だ。あと潮風が肌に纏わりついてきて、ベタベタして気持ち悪い。
なんとか吐き気をやり過ごしていると、到着のアナウンスが鳴った。数人の乗客が荷物を持って船内から出てきて、ゾロゾロと移動し始める。
私もこの人たちと同じようにしていれば酔わなかったかもしれないのに…！何故立ったまま海を眺めようと思ったんだろ。病み上がりなのだからせめて座っていればよかった、と少しだけ後悔した。
そうして座り込んでいると、後ろから人影が降りかかってきた。顔だけ斜め後ろを向くと、赤いキャリーケースを引いている同世代であろう銀髪で長髪の男の子が眉間に皺を寄せて、怒っている…のか、心配しているのか、表情が分かりにくい顔で立っていた。
「おい、顔色が悪いが大丈夫か」
『だいじょうぶじゃないです』
「そうか、下船の時間だぞ。立てるか」
『むりです…』
「…仕方ないな」
男の子は真横に置いていた私のキャリーケースとその上に置いてある箱を軽々と引いていった。自分の荷物もあるのに申し訳ないなぁ、と眺めていると船から荷物を下ろして戻ってきた。スクールバッグを肩にかけて片方の手を私に差し伸べてくれた。
その手を掴むとグイッと体を引き上げられ、急に血圧が下がったことによる立ちくらみをしてよろけそうになり、体のバランスを保つために手を強めに握ってしまった。
「お、おい…しっかりしろ、あと少しだ」
『はい…』
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作者名：アスター | 作成日時：2022年8月8日 17時
