刀剣乱舞 -私はブラック審神者らしい-

35 (愛されたい、なんて、) ページ35

＿＿＿＿＿…







今、何時だろう。

｢…、いて、｣


顔を上げるとそんな動作ですら体中に入った傷をもう一度開きかけて、全身にビキ、と激痛が走った。
今、夕方ぐらいだと思ったんだけど、


｢主、お腹すいてない、っごほっ、のかな、…｣


最近は俺に、買いに行かせてくれてたのに。
俺、主に嫌われるようなこと、


(いや、)



もう元から、嫌われちゃってるか、


1回だけ俺が、主、好きなんじゃないかって余計に買っちゃったもの、みんな外に投げて捨てられて、踏め、なんて言われちゃったもんな…、挙句、食え、なんてその後言うから、でも俺、嫌われたくなくて、


｢…っごほ、っ！｣


壁によりかかった上半身を丸め、激しい咳き込みに耐える。その度に、また痛みが走って、ああ、もう出てくんなよと自分の出す咳が恨めしかった。


主、

主、俺、


｢っ！げほっ、ごほ、っ！！…っ、｣


俺、主に1回、呼んで貰える為なら何だってやるよ、
俺本当に嬉しかったんだよ、久しぶりに、主が仕事くれて、でも、俺、ごめんね、俺余計なことして、ああ、もう言われたもの以外買わない、次会ったら絶対に謝ろう、もう何回も謝ったけど、主答えてくれなかった、やっぱりもっと謝んなきゃ駄目なんだ、


｢ごほっ、あるじ、…っ、げほ、っごめ、｣


何で俺、あんなことしちゃったんだろう、主にちょっとでも必要とされたなんて思って本当に馬鹿だ、俺、愛されたくて、主に、あるじ、


(…！！！！)


愛されたい、なんて、








＿＿＿＿＿何言ってんの？



｢！ああ…っ、ごめんなさ、ッ！ごほっ！！！！｣


一層強く咳き込むと抑えた手のひらにびちゃり、と何かが付いた感触がした、ああこれは、

(…、はは、)

暗がりの中でもそれは血だとわかる、


｢っ、げほ、｣


主ごめん、俺、何にも主に求めちゃだめなんだよねそうだよ俺何回も何回もあんなに主怒らせちゃったのにまだそんなこと思っちゃって本当に俺駄目な奴だね何にも分かってない、ああ、でも主お腹すいてないかな大丈夫かな、俺、買ったもの何回も確認して、ちゃんと入れたけど間違えちゃったりしてないよねああこんな汚れた手じゃ駄目だ、主の食べるもの汚れちゃう、



がたがたと震える手に目をやると、そこには鈍い痛みが常に走る指先があった、爪は無い。剥がされた。


ぼた、と垂れる血の雫をぼんやりと眺めていた。

(嗚呼、)




こんなの、沖田くん思い出しちゃうな、







＿＿＿＿…

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