三十八話 ページ5
「身分証…?あ。あった。名前も生年月日も、俺と同じだ。じゃあこれ、まじで俺の…?け、けど、身分証の偽物なんて作ろうと思えばいくらでも作れるんじゃ…、」
「しかし私達には、そんなことをする理由がありません。」
「それもそうか…。だ、だったらそのヒプノシスマイクってやつ、見せてみろよ!」
「…ほらよ。」
「これです。」
「何だ、普通のマイクじゃねぇか。」
二人が出した起動前のヒプノシスマイクに、ホッとするA。
「これを、こうすんだよ。」
と、左馬刻がマイクを起動してみせた。
「おら、銃兎も。」
左馬刻に促され、銃兎も起動させる。
「うわっ!?な、なんだよこれ。え、マジで…?」
姿を変えたマイクに、背後に現れたスピーカー。あまりに現実味の無い光景にAは目を丸くする。
「これでもまだ信じられねぇってんなら精神に直接攻撃、受けてみるか?」
「おい左馬刻!」
「いいだろ別に。何も本気でやろうってんじゃねぇ。手加減はする。」
「だが、」
「信じさせるには、それが一番早えだろうが。…おいA、どうする?」
17歳。精神的にもまだ子供なAに、こんな挑発めいた言い方をされてNOと言う選択肢は無かった。
「いいぜ。その攻撃、受けてやるよ。」
「おー、いい度胸だ。」
左馬刻がラップを始めようとしたその時、
「待て。」
銃兎が止に入った。
「あ?手加減するっつってんだろ邪魔すんな。」
「…私がやります。手加減なんて、貴方に出来る訳がありません。なので私がやります。」
そして銃兎が軽く、ほんの少しのダメージを与えるためのラップをした。
「な、なんだよ、これ。脳みそ直接殴られてるみてぇ。…気持ち悪い。」
「これが、ヒプノシスマイクによる攻撃です。23歳の貴方は先程の何十倍もの攻撃を受け、今の貴方になってしまったのでしょう。」
「マジかよ……。」
受け入れ難い現実に、言葉が出ないA。
暫く沈黙が続いた。
「…俺はここで世話んなってるって言ってたな。」
沈黙を破ったのは、Aだった。
「ええ。」
「んじゃ、23歳の俺が普段どんな部屋で生活してんのか。見せてもらうとするか。」
「私達の話を信じてくれたんですか?」
「ここまでされちまったんだ。納得はいかねぇけど、信じざるを得ねぇだろ。」
Aは乱暴に頭を掻きながらそう言った。
「それは何より。…じゃあ左馬刻、Aさんをいつもの部屋に案内してあげますか?」
「ああ。ついてこいや。」
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沙悟浄(プロフ) - ムムさん» そう言ってもらえると嬉しいです。とても励みになりました!ありがとうこざいます。 (2021年4月29日 13時) (レス) id: a53696e285 (このIDを非表示/違反報告)
ムム - 面白すぎましたけど、 (2021年4月17日 23時) (レス) id: ec0741b59c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙悟浄 | 作成日時:2020年12月31日 15時