第87話 記憶のサルベージ ページ41
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その日、私は父親に連れられて、親戚の家を訪ねていた。
これはその帰り道、休憩にと立ち寄った地での出来事である。
汽車での長旅にうんざりしていたので、気分転換に私は周辺を散歩することにした。
父に一言伝えてから、汽車を離れ細道を行く。砂利と砂が混じった道は人が歩けるように手入れがされていて、その脇からは伸びっぱなしの草花が無造作に生えていた。
しばらく歩くと、畦道に小さな少年が膝を抱えて座り込んでいるのが視界に入った。
あ、と声を上げそうになったが、微かに空気が喉を掠るだけだった。少年は私に気が付かず、何処か一点を見つめていた。
実際に目を合わせていないのに、ビリビリとした強い眼差しに吸い込まれそうになる。私は少年から目を逸らそうとしたが、好奇心に負けて少年の視線を追っていた。
そこには、とても愛らしい少女が楽しげにブランコを漕いでいた。
遠目でも分かる整った顔立ち。子供らしい無邪気な笑顔。鮮やかな赤毛。
「＿＿＿きれいな子、」
ポツリと溢れた声に、少年はようやくこちらに気がついた。大きく見開いた目に私の顔が映る。
その目はただ恐怖と混乱に染まっており、私は少し落胆した。
「あ…ごめんなさい、無遠慮に見てしまって。失礼でした」
宥めるように静かに、出来るだけ優しい声でいった。けれど、少年は私への警戒を解かなかった。
「…」
少年は固まってしまって何も反応しない。
会ったばかりの見知らぬ人間である私に怯えていた。
これ以上はいけない、すぐにここから去らなければ。
そう思ってはいるが、私は動こうとはしなかった。
「…あなたは何に怯えているの？」
「…え？」
「自分以外の人を知るのは少し怖いけど、それ以上に素敵な事だよ。仲良くなりたいと思うのは、悪いことじゃない」
「そんなこと…分かってる」
「じゃあ、きっとうまくいくね」
「そうかな……」
「ええ、絶対に」
人と接することは、君が思うほど難解なものではないよ、少年。
そこまで言って我に返った私は、今し方話した内容の気恥ずかしさにハッとなって、今すぐここから逃げたくなった。
「…あ、私ってばいきなり訳の分からないことをペラペラと…さよなら！」
「ま、待って！ 君は……」
少年が何か言っているのを背に、私は父親の元へ逃げ帰った。
9歳の春のことだった。
彼とはそれきり、会うことはなかった。
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2・3話のフラグ回収
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亜京目(プロフ) - 有難うございます！ストレートな褒め言葉に顔のニヤケが収まりません…これからもよろしくお願いします。 (2018年12月4日 20時) (
レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - こんにちは、初コメ失礼致します。物語の設定とか描写の仕方がドストライク過ぎてとても好きです(^^) これからも更新楽しみにしてます。体調など崩されぬようご自愛くださいませ。 (2018年12月2日 14時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - 雨さん» コメント有難うございます。最近の話の流れが難しく、四苦八苦しながら更新している状態です。ですが必ずまとめてみせます。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2018年9月22日 16時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
雨(プロフ) - 頑張ってください！更新楽しみにしてます！ (2018年9月17日 21時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - fairy taleさん» 暖かいお言葉をありがとうございます。自分の好きなように書いている物を読んで頂いていること、誠に感謝しております。これからもどうぞご愛読の方よろしくお願い致します。 (2018年8月29日 20時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜京目 | 作成日時：2018年8月17日 22時
