第65話 長い旅路の始まりだった ページ19
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目の裏に何か熱を帯びた化け物が蠢いているような、だんだんと潤む目頭の刺激に眉を寄せる。今にも泣き出しそうだった。
この世の全てを懺悔し許しを請うてもそれでも足りないくらい、今の私は深い思慕の念に襲われていた。思慕といっても恋慕や恋煩いの類ではない。あるいは信仰心に限りなく類似した別の何かだ。
それは久しく忘れていた母の面影。前の世界での私の母がフラッシュバックして、嫌に鮮明に脳裏に再生される。
けれど、目は決して少女から離さなかった。否、離せなかった。
清らかで穢れのない白百合のような深い慈悲が、ささくれだった私の心をいとも容易く溶かしてしまった。
懐かしき母を思い出せども、目の前にいるのは確かにリリーだ。それ以上も以下もない。けれど、私はこの時この瞬間に、私の瞳にかけてこの気高い生き物を命を賭してでも守ろうと、そう誓ったのだ
嗚呼きっと、私は一生彼女に敵わないのだろうな、と無性に頭を垂れてしまいそうになる
私は特殊な育ち故に危機意識が飛び抜けて高かった。第六感といえばまあそれで終わりなのだが。いずれ、この世界に悪勢力がさらに拡大し、随一に蔓延るようになることがあり得なくない未来だとも予感していた
「…いつになるか分からないけど、絶対に話すから。でも他のことはもう隠さない。……だから、リリーも何かあったら私に言ってほしい、と思ってる。…お願いだから」
「もちろんよ、といっても私はもうずっとAに話を聞いてもらってるわね。いつも付き合ってくれて助かってるわ。だからAも遠慮なんかしなくていいのよ」
「遠慮なんかしてないよ」
リリーは私の心的負担をなくそうとしてそう言ったのだろうが、私は本当に遠慮なんかしていないのだ。
こんな私だけれど、リリーの前では誠実でありたい。
この時、不思議とセブルス君の顔が頭をよぎった。
何故だろうか。セブルス君も私は大切な存在だと認識しているという事なのだろうか。
私が腹の中に沢山の思いを隠していても、彼にはすぐ分かってしまうようだった。
あの知能を持った帽子が私の頭を読むと知った時、どれだけの恐怖を体験したか今でも覚えているが、セブルス君にはあの不快感や恐怖感を微塵も感じだことがない。むしろ心配してくれるのかと隠しきれない温かさが溢れるようになる。何故だろうか。
いくら考えても答えが出ない問題を、私は早々に放棄した。
ずっと抱えることになるこの感情を、私は知らない。
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亜京目(プロフ) - 有難うございます！ストレートな褒め言葉に顔のニヤケが収まりません…これからもよろしくお願いします。 (2018年12月4日 20時) (
レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - こんにちは、初コメ失礼致します。物語の設定とか描写の仕方がドストライク過ぎてとても好きです(^^) これからも更新楽しみにしてます。体調など崩されぬようご自愛くださいませ。 (2018年12月2日 14時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - 雨さん» コメント有難うございます。最近の話の流れが難しく、四苦八苦しながら更新している状態です。ですが必ずまとめてみせます。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2018年9月22日 16時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
雨(プロフ) - 頑張ってください！更新楽しみにしてます！ (2018年9月17日 21時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - fairy taleさん» 暖かいお言葉をありがとうございます。自分の好きなように書いている物を読んで頂いていること、誠に感謝しております。これからもどうぞご愛読の方よろしくお願い致します。 (2018年8月29日 20時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜京目 | 作成日時：2018年8月17日 22時
