赤葦京治の寝起きは悪くない【赤葦京治】 (ページ27)

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そんな会話を交わしたのは、約１か月前。

『うーん映画が見たい気分』

「いいね。何見る？」

『見たいのがあるんだけど、もう映画館での上映終わっちゃったかもしれない』

前の席で、窓を背に椅子に横座りしている彼女が、頬を少しだけ膨らませて映画の情報が載っているスマホの画面を睨む。

ちらりと覗くと、彼女が見ていた映画のポスターはもう上映が終了していたものだった。

「それもう動画配信サービスで配信されてるよ」

『やっぱり…』

残念そうに肩を落とす彼女は、プランＢを練り始める。

あの雨の日以来、気づけば俺たちは週に一度出かける仲になっていた。

何をしているかというと、それはそれは健全なお出かけだ。

買い物、ゲーセン、お互い部活が忙しい時は、下校中散歩と称して公園で何時間もだべっていた時もある。

初めは疑い深い様子で待ち合わせ場所に現れていた彼女も今ではすっかり慣れて、

互いに言い出さずとも今度は何をしようと言い出すようになっていた。

お出かけなんて言葉を使ったがこれはもう実質デート。

彼女を何とか言いくるめてこの関係にこぎつけた事には嬉しいが、最近の藍沢は俺への警戒が完全にとかれていて、マジで都合の良い友達になっている。

欲というものは恐ろしいもので、以前までは藍沢に名前を呼ばれるだけで内心舞い上がっていたというのに、今友人として実質デートを重ねている事に満足がいかなくなってしまった。

「俺それ登録してるけど、よかったら家で見る？」

『えほんと？ならうちで見ようよ。私一人暮らしで駅から歩いていけるし』

ほら。

またそうやって。

藍沢の無垢なところに呆れて半ば拗ねつつも、その純粋さを利用する自分に苦笑する。

「うん、じゃあ今週の土曜日部活の後」

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