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8話 ページ8

木々の枝を転々としながら頂上に向かったAは、逃げ惑う鬼を見つけた瞬間、柄を握り。


『見つけた……』

「ひぎっ!!」


鬼が悲鳴をあげる頃には頸が落ちていた。

音速よりも速い彼女の攻撃と、移動。

鬼は灰になりながらAを見る。

その頃には刀すら鞘に仕舞われていて、衝撃だった。


「はや、い」

『速さが肝心の呼吸だからね』


Aは笑うと、横髪を耳に掛けて次の鬼を探す。

どこかで雷が鳴った。

Aを打ち付ける雨は、未だに晴れない。


次の鬼を見つけたAは、先程と変わらず鬼の頸を狩る。

それを繰り返して、何度も繰り返して、夜が明けた。


『十二鬼月級が何体も居たんじゃ、確かに生き残るのは難しいかもね』


周りには沢山の隊服があり。

Aはそれを見て、手を合わせた。


『……』


黙祷を捧げたAは、振り返って山を降りていった。

麓に着いた頃、雨も上がって。


『……雨……日を遮る…土砂崩れ……』


Aはその事に気がつくと、もう一度山に入った。

これだけ分厚い雲があれば確かに日は当たらない。

そしたら、ここは、鬼にとってとても良い場所になる。

それにここは山越えする人が必ず通らなければ行けない道。

いいエサの溜まり場だ。


『クソがっ!』


Aは右足で枝を蹴って、鬼の気配を探す。

あっちこっち探し続ける。


『……』


すると、鬼の気配が強く感じられるところがあった。

Aは立ち止まる。

Aが立ち止まった瞬間、見つけた鬼が近づいてきた。

なのでAは刀で頸を落とす前に、鞘で受け止めた。


『あなたが、ここの鬼?』

「そう、俺がここの鬼」


Aと鬼は距離を置いた。

その鬼の目には下弦の三と示す文字が刻まれていた。


『……十二鬼月……』

「お姉さん、柱?」

『柱じゃない』

「にしては、とても強かったね。
ずっと見てたよ」

『私は生憎、鬼の気配が多すぎてあんたの気配を見逃してた。
だから柱じゃない』

「けど戻ってきたんだ」

『山だけ雨が降ってたから。
そうすれば昼間でも鬼は活動できる』

「すごーい、それだけで疑ったんだ。
山って凄く天気が乱れやすいのに」

『うん、だから疑った』

「それで柱じゃないんだ、すごーい」


ぱちぱちと、鬼――五月雨(さみだれ)は感心した。

Aはただ笑って鬼を見つめる。

一触即発の空気の中、先に動いたのは五月雨だった。

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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月19日 21時

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