44話 ページ44
蝶屋敷から風屋敷に戻ったA。
長い安静期間が明けたAは、さっそく実弥と道場で向かい合ってた。
「安静明けだからって無理すんなよ」
『とは言っても付き合ってくれてるんだもん』
Aは隊服の上着を脱ぎ捨て、実弥は木刀を握って立ち上がる。
そこで二人は木刀を構えて向かい合った。
「風の呼吸」
先陣を切ったのは実弥だった。
それにAも応戦する。
二つの呼吸が合わさる中、Aは実弥の木刀を叩き落とそうとしたが、実弥は逆に振りあげようとする。
『っ!』
「オラァ!!」
『やるじゃん!』
木刀がぶつかり合う。
実弥が押し返すとAは、空中で回転して見事に着地した。とてもしなやかに。
流れる動作かのようにAは木刀を構える。
『さてと、実弥』
「わかってらァ」
二人は向かい合って本気でお互いにぶつけ合った。
結果、二人より先に木刀が粉々になり、お互いがいた位置の床に着地した。
『私の勝ちね』
「俺に決まってんだろォがァ」
『えー、何言ってんの〜?呼吸歴は私が上です〜!』
「んかの関係ないだろォがァ。
それ言ってたら討伐数なら俺が上だな」
『は!?嘘つけ!』
「そんな嘘ついてどうすんだ」
お互いが見つめ合うと、どちらからともなくAは笑い、実弥は息を吐いた。
そこからというとの、二人は引き寄せ合うようにお互いが触れ合える位置に立った。
『やっと帰ってれた気がする』
「それは良かったじゃねぇの。
おかえり」
おかえり
その四文字と実弥が抱きしめてくれるその温もりにAは安堵した。
本当に、あの日から時計が動き出した気がする。
そう思った瞬間、Aは実弥の背中に手を回して涙を流し始めた。
『ごめんなさい……』
実弥はAの頭を撫で、背中を撫で、震える体を優しく抱きしめていた。
(――あの日も、こんなんだったな、Aは)
Aの親友、カナエの訃報を聞いた時。
Aは布団の中で泣きじゃくった。
なぜなら、本当ならあの任務に行っていたのは、病に倒れ布団に臥せていたAだったのだから。
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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月19日 21時