37話 ページ37
夜が明けた。
任務を終え駆けつけた実弥が、眠っているAの横に立った。
「A……」
身体中に包帯が巻かれていた。
とても、痛々しい彼女の姿。
「これだから、辞めろっつったんだァ」
「この人は、頑固ですからね」
実弥の横にやって来たしのぶは、Aの脈を測った。
しばらく黙っていると、Aが目を覚ます。
『あ、れ、どうしたの、二人とも』
「あら、Aさん。
おはようございます」
『おはよう、しのぶちゃん。
おはよう、実弥』
Aは首を動かすのもやっとだった。
あまりにも体が痛すぎる。
左足も固定され、両腕も固定され、肩も固定され、全身固定され。
最早固定されていないところが無いのでは？という形で、どこもかしこも固定されていた。
そんな中、Aは実弥を見る。
『どうしたの、実弥』
「こんな目にあってまで、辞める気ねェのか」
Aは微笑んだ。
『無いよ。今は』
「この前よりも酷いけがなんだぞ、A。
分かってんのかよ！！」
「不死川さん、他にも患者は居ます。お静かに願えますか」
叫ぶ不死川と、宥めるしのぶと、笑っているA。
異様な空気の中、Aは実弥を見つめた。
『実弥、私の右手を握ってみて』
「……」
言われた通り、手を握ってみた。
そこで実弥は目を見開く。
「お前……」
『……分かったでしょ？』
その手は震えていた。
その事に実弥は、しのぶに告げる。
「悪ぃ、胡蝶。
暫く二人にしてくれねぇか」
「先程みたいに騒がないでくださいね」
「あァ」
しのぶは部屋を出た。
途端、実弥はAの頬に手を当てる。
包帯が巻かれた顔付近が、痛々しい。
そんなAの目からは、涙が溢れ出た。
『また、守られた』
「……」
『煉獄は、私を庇って、死んだの』
「……」
『本当は、私が、死んでたんだよ、実弥』
Aは力が入らない手で実弥の手を握った。
いつもに比べて力が無いAの手、挙句震えている。
その様子に、実弥はただ手を握り、涙を拭い、話を聞くことしか出来なかった。
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作者名：やぁと | 作成日時：2021年10月19日 21時
