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何も知らない5 ページ7

部屋の掃除を終え、昨日と何も変わらない部屋へと戻した。

いや、ちょっとだけ違う。

それは、部屋の端。

壁についた大きな傷。

芥川さんが机を飛ばした時にぶつかってついてしまった跡だ。

まぁ、別に構わないのだけれど。

でももし、おにいちゃんが帰ってきたら。きっと、驚いてしまうだろう。

それは嫌だ。

壁紙を張りなおそう。



「いってきます。」

材料を買うために家を出た。

必要なものを探しているうちに、時刻は昼を過ぎた。

近くのファミリーレストランへ入り、ホットケーキを食べた。この店のホットケーキも、甘くておいしかった。

そんなことをしながら時間をつぶしていると猫が歩いていた。

「にゃー」

思わず、声に出して鳴きまねをしてみる。

そんな私に気づいたのか、こちらを振り向いた猫。

恐る恐る手を伸ばして、やわらかい毛並みに手を滑らせる。

――ニャー

気持ち良さそうに鳴く猫。

でも、ピクッと耳が動いた。

そして私の手から逃れると、路地裏へと走って行ってしまった。

「あ、待って。」



肩を落とし帰り道を歩き始める。

ついていきたかったが、猫を追いかけるのはさすがに難しい。

坂を下り、喫茶店の前を通り、裏路地を通りかかった。

その時、

地響きにも似た音が響き渡った。



「死を恐れよ。殺しを恐れよ。

死を望む者、等しく死に・・・」



その声には聞き覚えがあった。

路地を進んでいく。



そこで、目に映ったのは、赤。

「・・・あ、くたがわさん?」

そこには、金髪の女性と、芥川さん。

その向こうで血を流すセーラー服の女性と男性。

そして、昨日土手で助けた青年、中島さん。

目を疑いたくなる光景。

「こ、れは一体?」

次の瞬間には、芥川さんから現れた黒い物体によって壁へたたきつけられていた。

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作者名:詩織 | 作成日時:2016年11月6日 11時

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