あの人は変わった【過去編・番外編6】 ページ36
群がっている野次馬の中を掻き分け女たちの元へと着いた。
必死になって走ってきたせいか息は乱れている。
??「約束通り、居てくれたんだな」
そう言い微笑む。
椿「約束って?」
椿は何の事かと思い首を傾げた。
百合「言った通りに話がある。来い」
雪の腕を引っ張り連れて行く。
椿「お姉様!?」
椿は、慌てて連れて行かれる姉の後を追った。
・
其れから、程なくして人気の無い近くの河原に着いた。
百合は繋いでいた手を離し、雪の方向へと向き直り真剣な面差しで口を開いた。
百合「お前…鬼だな?」
百合は確かめるように問うた。
黒い双眸が、雪を睨めつける。
雪は小さく吐いた。
雪「はぃ…」
その気迫に圧倒され、答えた。
椿「雪、お姉様?」
この場の雰囲気がただ事ではないと気付いた小さな少女の表情は、険しくなった。
雪「大丈夫よ。椿…」
幼子を、安心させるかのように優しく頭を撫でる。
百合「やはり、鬼…なのだな」
雪は黙って頷く。
百合「何処の鬼だ?」
雪は重々しく、口を開いた。
雪「西の…とある一族の…鬼です」
少しづつ、間を開けて言う。
西の鬼…
西の鬼!?
百合「それじゃあ、西の鬼の一族ってことは…」
雪「そう、風間様がいらっしゃる所です」
やっぱりあいつかぁ。
あの顔、思い出しただけでも腹が立つ!
にしても…
百合「どうしてまた、西の鬼の一族さんがひとの物を盗むなどということをした?」
雪「…其れは…‥」
急に言葉に詰まる。
百合「如何してだ?」
黙り込んだ雪に、真剣な眼差しで見入る。
先ほどとは違う百合の語調に息を呑む。
嫌な、空気が漂った。
雪「ッ」
お金が無かったから…何て、とても言えない。
雪は下を向き押し黙った。
百合「何か訳ありなようだな」
百合は、下を向いて黙っている雪を見た。
しかしと、言葉を紡ぐ。
百合「どんな訳が有ろうとも人の物を盗むと言うのはやはりいけない事。其れは分かっているな?」
先ほどよりも少し強い語調で言った。
そして、冷たい眼で椿を見た。
【あの人は変わった過去編・番外編最終回】
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作者名:如月輝夜 | 作成日時:2016年9月16日 21時