僕たちの帰る場所2 (ページ49)

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青春の瞬きページ49

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遡ること数か月前。
授業を終えてバイトへと急ぐ僕に、クラスの女子が次々と話しかけてくる。

『ラウールくん、お疲れ様。小テストどうだった？』
『今日暇？私たちとカラオケ行こうよー』

正直、彼女達のことはちょっぴり苦手だ。
ハーフの僕を珍しがって近づいてきて、対して知りもしないのに馴れ馴れしい。

いつもそうだ。
この街に引っ越してきて、今度の高校ではそういう奇異の目で見られないといいなと思っていたのだけれど、その願いは叶わなかったみたいだ。

「あーごめん、今日バイト入れちゃってて」
『そっかー残念、また明日ね！』

僕が断ると、女子たちはキャピって音がしそうなくらいわざとらしくそう言って、またそれぞれのグループの輪の中へ戻っていく。

一方で、僕のそういうつれないところが気に障るのか男子達からは距離を置かれていて、僕はせっかくの高校生活を楽しみきれないでいた。

それでも今までは、プロダンサーになるという夢さえあれば、高校なんてどうでもいいと思っていたんだけれど…

『いつもここで踊ってるの？』
昼休み、学校の屋上でダンスの練習をしていた僕に話しかけてきた知らない子。
長い黒髪が綺麗だ。

「時々。君は？」
『私も時々。ぼーっとしたり、本読んだり』

クラスの子とは違って、どこか大人びている彼女。憂いを帯びた瞳も、ちょっと低い声も、なんだかすごく魅力的だった。

「そっか、じゃあ踊ってると気が散るよね」
『いいよ別に…ラウールくん、だっけ。プロ目指してるんでしょう？』
「知ってるんだ」

『…みんな噂してるから。かっこいいとか、でも性格悪いとか。喋ったら普通みたいだけど』
「性格悪いってなんだよ…俺何もしてないのに。てか君も本人に向かってそういうのどうなの？」
『ああ、そうだよね、ごめん』

彼女は興味なさそうにそういうと、まるで僕なんてここにいないかのように、壁にもたれて本に目を落とした。
こんな人は初めてだった。

「ねえ、名前なんて言うの」
『キタノキョウコ。方角の北に野原の野、響くって字に子どもの子』

そこで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

「じゃあね、北野さん。またここで会えるかな」
『うん、多分また』

「…北野さん、か」

こうして、僕の高校生活に一つの楽しみが出来たんだ。