僕たちの帰る場所2 (ページ16)

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iw side

あの時翔太の一言がなかったら、学園祭の思い出は全く違った形のものになっていたかもしれない。

まず変わったのは練習。
翔太の意見を受けて、学園祭の準備期間はひたすら一曲のクオリティをあげることに集中した。
考えれば考えるほどドツボにハマって、それを振り払うように踊り続け、それまで味わったことのない苦しみを味わった。
一方で、そうやって一曲を作り上げた時の達成感も初めて知った。

それから、俺たちの関係性。
ただの仲良しグループじゃなくて、ダンスのことを含めて言いたいことは何でも言い合える関係になった。

そして何より、本番のステージ。
翔太が持って来たのは、揃いのスーツ風の衣装にネクタイ。ネクタイは見事に一人一人に合う色柄がセレクトされていた。
思えばこの頃から、翔太の色やデザインに関するセンスは光っていたんだな。

それを身につけて上がったステージは、練習の成果もあって、今まで踊って来た中で最高の出来栄えだった。
もちろん観客からの反響もすごいもので、中でも佐久間は『誰あのダンス上手い子？！』なんて大きな話題になった。
そして、俺らはぶっちぎりで最優秀賞を獲得したんだ。

iw「最優秀賞獲得、おめでとう！乾杯！」
「「乾杯ー！」」

俺はその後、みんなとは離れ離れになってしまったから、結果としてこれが最初で最後のステージになった。だから、そのステージをいい形で終えられたことは本当にラッキーなことだった。
けれど、例え最後のステージにならなかったとしても、俺はこの学園祭の思い出を一生忘れられなかっただろう。

佐久間がダンスでみせる男だとしたら、翔太は俺たちのあるべき姿や隠れた魅力がみえる男だ。
どちらも類稀なる才能だと思う。

そして今回、またみんなでこの曲を踊れることを、俺は本当に嬉しく思うんだ。