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*153* ページ13

小さな箱の中身。
そこには本つげの綺麗な櫛が入っていた。
持つ場所には、小さな桜が彫られている。

この時期に桜の彫り物の櫛なんて売っていないはずだ。
と、言うことは…。

春には…。

私はその櫛を見て、驚きと嬉しさで自然と涙が零れた。


斎藤「な、何故、泣く…。
迷惑、だっただろうか…?」

貴女「そんな事、ありません…っ。
まさか櫛を頂けるなんて、思ってなくて…っ、嬉しくて…」


どれだけ鈍感な私でも、櫛を送られる意味は分かっている。
【櫛を送る】とは求婚だ。

つまり私は今、斎藤さんからそれを受けたんだ…。

櫛を見つめたまま嬉しさに涙を流していると、その櫛の入った箱ごと手を握られた。
目線を上に向けて斎藤さんの目を見れば、先程と同じ真剣な視線のままだけれど、何処か安心したような色が見える。

そして…。


斎藤「……A。俺と、祝言を挙げてはくれぬだろうか…?」

貴女「……はい、よろしくお願いします…っ」


真剣に見つめられていた目は、今度は安堵と喜びで伏せられていて、私はそのまま斎藤さんの腕に優しく包まれた。
胸に当たる耳から聞こえるのは、早鐘を打つ斎藤さんの鼓動。

あ、緊張してたんだ…。

緊張しながらも、必死に言葉を紡いで伝えてくれた。
それが嬉しくて、私の口角も自然と上がる。


斎藤「必ず幸せにする。だからずっと、傍にいてくれ」


耳元で囁くように告げられた言葉。
私は無言で頷いた。

今日はとても幸せな日だ。
土方さんが生きていて、姉様や新選組の人たちが戻って来た。
そして、斎藤さんからの求婚。

私は一生、この日の事を忘れないだろう。

斎藤さんの身体から離され、頬に手が宛がわれ目線が合う。
少しだけ視線が交わってから、口付けが降って来た。

その口付けは少ししょっぱい涙の味だけど、甘く優しいものだった。

154話:祝言の日<斎藤視点>→←*153*



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まほろ(プロフ) - 馬燕さん» コメントありがとうございます!完全なるハッピーエンドを目指して走った思い出です(笑)今自分で読み返してみても誤字脱字が多すぎるので校正中なのですが、そんな中、読んで頂きありがとうございます♪ (7月12日 6時) (レス) id: 9803a15670 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - 桜日和さん» 返信が遅くなり申し訳ありません(泣)私自身、原作のゲームをやり、アニメを見ていた時にまた一人、また一人といなくなっていく事が辛すぎてどうにかならないか?と考えた妄想の結果がこの物語です(笑)楽しんで読んで頂けたなら幸いです♪読んで頂きありがとうございます (7月12日 6時) (レス) id: 9803a15670 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - 桜さん» 風化してしまうほど返信が遅くなってしまい申し訳ありません(泣)最高ですとの言葉、最高に嬉しいです!読んで頂きありがとうございます! (7月12日 6時) (レス) id: 9803a15670 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - ちーずまんさん» 2年前にコメントくださっていたのに返信出来ていなくて申し訳ありません(泣)薄桜鬼で一ちゃんが好きすぎて妄想が爆発して書きまくった結果が一主です(笑)原作で好きなカップリングが土千が好きなので盛り込んでみた…という裏話です(笑)読んで頂きありがとうございます (7月12日 6時) (レス) id: 9803a15670 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - りゅかさん» 2年前にコメントくださっていたのに返信出来ていなくて申し訳ありません(泣)初めて書いた物語だったので拙い文章で申し訳ない気持ちでアップしていましたが、楽しんで頂けて、しかも出会えた事に幸せだと言って頂けて私こそ幸せです!ありがとうございます! (7月12日 6時) (レス) id: 9803a15670 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まほろ | 作成日時:2019年10月25日 0時

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