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ハハッと自嘲気味に笑い、
空を見上げながら
手を伸ばして伸びをしている。
見えていないのだから、
見上げたは可笑しいだろうか。
A「もう、誰ですか？
悪戯が過ぎますよ」
見えない誰かを探すように、
俺に向かって手を伸ばしてくる。
その手を掴み、握った。
その手を探るように、
もう片方の手で撫でてくる。
優しく撫でていた手が、止まった。
A「え…？また、夢…？」
斎藤「夢ではない」
A「どう、して…っ！
だって、斎藤さんはっ！」
斎藤「俺は間者として、
任務で御陵衛士に行っていただけだ。
その任務が終わった。だから、戻って来た」
巻かれている白い包帯が、
どんどん灰色へと変化していく。
上を向いていた顔はだんだんと下がり、
最後には完全に俯いてしまった。
小さな嗚咽を漏らしながら、
それでも発する言葉に溢れる感情は、
哀しみではなく嬉しさのような気がする。
A「おかえり、なさい…」
斎藤「ああ。ただいま」
手を握ったまま、
Aが落ち着くのを待った。
あんたの手を握るのは、熱を出した時以来だな。
なんて言ってやりたい気持ちを抑えて。
斎藤「雪村から預かってきた。飲むか？」
A「はい。でも、冷めちゃっていますね」
斎藤「持って来た時から冷め始めていた。
ところで、その包帯はどうした」
A「ちょっと、斬られてしまいました」
悲しむ様子もなく、
Aの口角は上がっていた。
斬られた？
誰に？
いつ…。
しかも、目など…。
斎藤「あんたは傷がすぐに治ってしまうはずだろう。
何故治らない」
A「童子切安綱。
刀をよく知る斎藤さんなら、分かりますか？」
斎藤「聞いた事はある」
平安時代。
源頼光が酒呑童子を斬ったとされる刀だ。
だが、それがどうしたのだろうか？
A「それで斬られてしまったんです。
童子切は鬼斬りの刀ですから」
斎藤「鬼、斬り…？」
A「童子切安綱は、対鬼用の刀なんです。
その刀で斬られた鬼の傷は、
治りはしますが遅いんです」
斎藤「誰が、それを…」
A「……いいんですよ。誰かなんて」
斎藤「いいわけがないだろう！」
思わず声を荒げてしまい、
Aは驚いたようにこちらへ顔を向ける。
斬られた上に、
視界まで奪われてしまったというのに、何故隠す。
もっと怒るものだろう。
悲しみに打ちひしがれてもおかしくはない。
それでもAの口角は上がっていた。
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斎藤ようこちゃん(プロフ) - 斎藤さんと恋仲になって欲しいです。 (2020年5月24日 22時) (
レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まほろ | 作成日時：2019年9月19日 7時
