８８：闇の再会＜斎藤一＞ ページ8
話も終わり、
この場に雪村だけが残った頃。
俺はずっと気になっていた事を問うた。
斎藤「ところで、Aの姿が見えなかったのだが、
どうかしたのか？」
千鶴「部屋にいますよ」
斎藤「……？」
部屋にいる？
この場には幹部しかいないのに、
呼ばれなかったのか？
普段なら副長が呼んで、
その場に出させていたはずだが…。
何かやらかしたのか？
いや。Aに限って、
謹慎を食らうような事はしないだろう。
千鶴「当分は屯所の外でお暮しになるんですよね？
それならAに会って行ってください。
きっと喜びますよ」
そう言って雪村は、
飲まれる事のなかった茶を二つだけ盆に残し、
Aの部屋の場所を告げ、
残りの茶を持って炊事場へと行ってしまった。
教えて貰わんでも分かってはいるのだが…。
それは言えないから仕方ないか。
残された茶が乗った盆を持ち、
Aの部屋へと向かった。
あの日、
俺が新選組を離れるとAが知った日。
俺の背中で、
泣きそうな声を必死に抑えて伝えてくれた言葉を、
一日も忘れた事はなかった。
最後の"ありがとう"と"すみません"の
両極端な言葉を聞いた時は、
振り向いて強く抱き締めたかった。
だが、俺が新選組を離れるのは任務。
任務に私情を挟むといい事はないと知っている。
だからあの時は、衝動を必死に抑えた。
副長から任務終了の報告を聞いた時、
真っ先に脳裏を過ったのはAの笑顔。
ああ、やっと終わるんだ…。
そう思い頬が緩んだ。
その話を聞いたのがこの屯所でだった。
副長から熱を出して寝込んでいると聞いたから、
夜更けだという事もあり、
様子を見に行ったのだが…。
当の本人は夢だと勘違いしていたな。
縁側を月明りだけを頼りに歩く。
ふと人影を見つけ、
それが誰かだなんて考えなくても分かる。
何処に来ても、居る場所は同じなのだな。
縁側に座っている姿は、
とても懐かしく感じる。
だが俺は、その姿に違和感を覚えた。
いつもは高い位置で結ばれている髪が、
今は低い位置で結ばれている。
それに、頭に包帯…？
A「誰、ですか…？」
夜も更け始めているからと、
静かに歩いてきた縁側を足早に変えて近づく。
斎藤「っ…！」
盆を置いた音にビクッと肩を震わせたAは、
ゆっくりとこちらを向いた。
頭じゃない。
目に包帯を巻いているのか…っ！
A「……さ、いとう、さん…？
なわけないか」
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斎藤ようこちゃん(プロフ) - 斎藤さんと恋仲になって欲しいです。 (2020年5月24日 22時) (
レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まほろ | 作成日時：2019年9月19日 7時
