【薄桜鬼】純血を巡る者 １

１２：思わぬ出会い ページ29

斎藤さんの前に、
ストンと静かに降りた。

急に目の前に出てしまったからか驚いたみたい…。




A「す、すみません…。
斎藤さんに付いて行けと言われましたので」

斎藤「あ、ああ…。
しかし、その姿は見慣れないな」

A「私自身も見慣れていませんから」




斎藤さんの横、少し後ろに移動して
状況を把握するために歩き出した。




斎藤「会津と薩摩が手柄の取り合いか…。
愚かな事だ…」




その言葉に苦笑いを返す事しか出来ない。
二組の言い争いを聞いていた
斎藤さんだったけれど急に私の腕を引っ張って、
自分の背中へ隠すように私の前に立ちはだかる。

何事かと思ったけれど、私は動きを止めた。




？？「池田屋ではご迷惑をお掛けしましたな。
彼の額の傷は大丈夫でしたか？
加減が出来ず済まなかったと、お伝えください」

斎藤「藤堂を倒したのは、あんたか…。
なるほど、それなら合点がいく。
大方、薩摩藩の密偵として、
あの夜も長州勢の動きを探っていたのだろう」




誰かと話をしているけれど、
私より身長の高い斎藤さんの後ろにいては
誰か分からない。

でも、あの声…。
何処かで聞いたような…。

それに、池田屋で平助君を倒したって
どういう事？

急に動いたかと思ったら、
斎藤さんは居合の型で刀を抜いた。




斎藤「あんたは新選組に仇を成した。
俺から見れば藤堂の仇という事になる」

？？「しかし今の私には、
君たち新選組と戦う理由がありません」




この言い方も聞いた事がある。
しかし、この疑問はすぐに晴れる事となる。




天霧「私は、天霧九寿と申す者」

A「あ、まぎ、り…？」




思わず声を出してしまった。
聞いた事あるはずだ…。

だって、天霧は私の…っ！




斎藤「おい！」




斎藤さんの背中から飛び出して前に出た。




A「天霧君！」

天霧「……A、ですか…？」




一番驚いているのは斎藤さんだろう。
顔を覆った布を下にずらして
天霧君に近づいた。




天霧「あなた、ここで何をしているのですか？！」

A「天霧君こそ、何をしてるの…？」

天霧「私は薩摩に属する者。いて当然でしょう」




視界が揺れる。
天霧君の姿が、少しぼやけてくる…。

天霧君に近づいて、天霧君の服をキュッと握った。




A「天霧君がいるって事は…っ、
匡ちゃんもいるの？！ちー君は？！」

天霧「不知火は公家御門です。
風間は天王山の方にいるはずです」




天王山って、姉様たちの所！？

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