182針 ページ42
ガランとしたビル内を進んでいくと、病室から昇降機に続く廊下では人とすれ違うどころか、気配すらしなかった。
どこかに出払っているのか?それとも──…
高速で下りていた昇降機が止まって扉が開くと、正面入口から眩しいほどの光が差し込んでいた。
そこにも人は居ない。
大理石の床は私の足音を響かせるが、それ以外の音がしないのでやけにうるさく感じた。
ピタリと足を止めて、振り返ることなく私の後ろに声をかける。
『お邪魔しました。
森さんには、この一件が落ち着いたらいつでも借りは返します、と伝えてください』
背後で微かに衣擦れの音がした。
律儀な人だから、きっとまた直角並に腰を曲げて私に頭を下げているんだろう。
『それじゃあまた……桜庭さん』
そのまま自動扉をくぐり抜けて外へ出ると、青い空に白い雲。
私たちの散々な状況と反したかのような晴天に軽く睨みながら、急いで街の中心に向かうために足を動かした。
ポケットの中には、病室から勝手に拝借した鎮痛剤が幾つか入っている。
先刻飲んだばかりなのでまだ痛みはないけど、いつしんどくなるかは分からないから念の為だ。
『さて、と…』
森さんからの話だと鏡花ちゃんは敦くんを助けるために人質事件の現場に残った。
恐らく二人は共に行動してるはずだ。
そして、その敦くんも何かしら動くはず。
『敦くんのやりそうなこと、とすると……』
″「太宰さんなら──」″
『……うん、きっと治くんなら如何するか、とか考えそうだね』
敦くんは時々治くんに頼りすぎる節があるからなぁ…いつかそれが仇にならないといいけど……。
『──と、余計なことを考えてる暇は無いね…。
そうすると、虫太郎さんの発言を思い出すかな?』
パトカーの無線から聞こえた彼の発言は捨て置けない。
探偵社が″こうなる″ことを分かっていた。
そして現在は行方不明となった虫太郎さんを探す手掛かりは──
『
となると敦くんと鏡花ちゃんはフィッツジェラルドの元に向かっている。
『…そんな簡単に進ませないよねぇ?
ドストエフスキー…』
いつの間にか港を抜けて中心街の手前まで来ていた。
赤信号を待っている間にドストエフスキーの持つ駒を思い出す。
ウイルス異能者、プシュキン。
岩の異能者、ゴンチャロフ。
それ以外に判明しているとしたら…
『元組合の牧師 ホーソーン』
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jumpcontrolbear(プロフ) - 砂漠のうさぎさん» コメントありがとうございます!なんと!!私の知らないところでこの作品の名前が上がっていたんですね!嬉しい限りです!!更新ゆっくりですが頑張っていきます!ありがとうございます! (2019年10月21日 0時) (レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠のうさぎ(プロフ) - あるユーザーさんの紹介から飛んできて一気読みしました。原作の雰囲気を崩さないで新しいキャラが動いていて凄いと思いました。話の展開とか言葉のチョイスとかとても好みです…更新楽しみにしてます、頑張ってください!長文失礼しました (2019年10月20日 21時) (レス) id: ad3e66ea3f (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!あけましておめでとうございます!!また動くみんなを見ることが出来ますね!相変わらずの亀さん更新ですがよろしくお願いします! (2019年1月5日 23時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あけおめです!今年ほ更新頑張ってください!作者さん文スト3期4月放送ですよ!来ましたよ!!いろいろと大変かもれませんが頑張ってください! (2019年1月5日 1時) (レス) id: c482d4ca60 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!番外編も読んでくださったんですね…(感涙)楽しんでもらえてなによりです!!亀更新ですが頑張りますので気長にお待ちいただけると嬉しいです! (2018年11月22日 9時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年8月31日 11時