175針 ページ35
『全く…桜庭さんもまだ私を″参謀″と呼ぶんですね』
口元に手を当ててくすくすと笑うAの姿に、桜庭は昔のAが重なって見えた。
四年もの月日が経てば大人に近づくのは当たり前のことだが、その表情のどこかにまだあの頃の面影が残っている。
『…それで、その拳銃は?』
ふと、桜庭の手に握られているものを見て、Aは優しい顔のまま首を少し傾げた。
「ッ失礼しました」
桜庭はそこでようやく拳銃を握ったままであることに気が付き、直ぐに懐に戻す。
『いえいえ、お気になさらず。
珍しいですね、いつも落ち着いていた桜庭さんがあんなに大きな音を立てて部屋に入ってくるなんて』
「東野参謀の睡眠を妨害してしまい申し訳ございませんでした。
──部屋の中に見知らぬ人物が見えたので…」
桜庭は体を直角に曲げて謝罪したあと、云いにくそうに間を開けてから頭を少しだけ上げる。
『人、が?』
ピク、とAの体が反応する。
それから確認するように部屋の中を見渡した。
『…桜庭さんが入ってくるまでに、人が入ってきた気配はありませんでした』
「はい。
俺も、″眠っている参謀″に気付かれずに近づいた、ということに驚いてあのように荒々しくなってしまいました。
──しかし、銃口を向けた時には姿が消えていたので…俺の見間違いかもしれません…」
口ではそう云っているものの、まだ自分自身納得していないのか桜庭は不服そうに眉間に皺を寄せている。
なにせ、桜庭はAの警戒心の強さをよく知っていたからだ。
敵にはもちろん、同じポートマフィアに属する仲間にでさえAは警戒心を持っていた。
表面上は、仲間に優しく穏やかに接しているAだが、決して自らの腹の中を明かすことは無く、絶対に自らの領域に踏み入らせない。
さらに云うと、Aは″それ″を隠すことが恐ろしいほどに上手かった。
だから大抵の人間はAのことを「優しい」と評価するが、その実Aはこれっぽっちも相手を信頼してはいない。
桜庭が″それ″に気づいたのはAの参謀補佐になってからだいぶ時間が経ってからだった。
参謀補佐として常にAの近くに居た時に、実感した。
自分は
しかし、桜庭はそれに嘆くことは無かった。
なぜなら桜庭はAの″それ″を
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jumpcontrolbear(プロフ) - 砂漠のうさぎさん» コメントありがとうございます!なんと!!私の知らないところでこの作品の名前が上がっていたんですね!嬉しい限りです!!更新ゆっくりですが頑張っていきます!ありがとうございます! (2019年10月21日 0時) (レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠のうさぎ(プロフ) - あるユーザーさんの紹介から飛んできて一気読みしました。原作の雰囲気を崩さないで新しいキャラが動いていて凄いと思いました。話の展開とか言葉のチョイスとかとても好みです…更新楽しみにしてます、頑張ってください!長文失礼しました (2019年10月20日 21時) (レス) id: ad3e66ea3f (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!あけましておめでとうございます!!また動くみんなを見ることが出来ますね!相変わらずの亀さん更新ですがよろしくお願いします! (2019年1月5日 23時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あけおめです!今年ほ更新頑張ってください!作者さん文スト3期4月放送ですよ!来ましたよ!!いろいろと大変かもれませんが頑張ってください! (2019年1月5日 1時) (レス) id: c482d4ca60 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!番外編も読んでくださったんですね…(感涙)楽しんでもらえてなによりです!!亀更新ですが頑張りますので気長にお待ちいただけると嬉しいです! (2018年11月22日 9時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年8月31日 11時