174針 ページ34
『あれは使い所が難しくて、数回程度しかやったことないけど……出来る?』
「そんな確認必要ねェ。
お前がそれを云うッてことは、そうしなきゃやべェってことだろ」
中原は帽子を頭にのせながら、寝ているAを見下ろした。
その表情は自信に満ちている。
それを見たAは短くフッと笑って
『それじゃあ、皆を頼んだよ』
ゆっくりと瞼を閉じた。
元々、酷い怪我と重度の疲労によってここへ運ばれたAは起きているのもやっとの状況だった。
「(…ッたく……俺にまで弱味隠そうとすんじゃねェよ…)」
そんなAの強がりに中原は気づいていたが、何もしてやれなかった自分に苛立ちが積もる。
そして再び眠りについたAの頭を軽く撫でてから病室を去っていった。
・
『さぁ……私達も始めようか』
どこか真っ白な空間でAが呟く。
『おいで…【_________】』
・
どれほどの時間か経っただろうか。
Aの眠る病室へ向かう一人の人物。
嘗て、Aがポートマフィアで参謀として所属していた頃、Aの補佐をしていた桜庭だ。
桜庭は、中原が探偵社員を無事に回収し終えたことをAに報告するよう、森からの命令を受けていた。
廊下を曲がったところで、桜庭はふと、Aの病室の扉が少し開いていることに気がつく。
「誰か来ているのか?」
疑問に思いながらも足を進め、扉の前に立つ。
ほんの少しの隙間からは、病室の中が細く見える。
病室は大きな窓からの陽の光によって、白く眩しい光に包まれていた。
幻想的とも取れる光景の中、ベットの上には眠っているA。
──そして
そのAの脇に立ってAの体に手を置く、白い長い髪の女が眩しい光の中に見えた。
「(──ッッ!?侵入者かッ!!?)」
桜庭はスーツの内側から拳銃を引き抜いて、扉を思い切り押し開けた。
そして白い髪の女に銃を向ける。
しかし、照準を合わせた頃には女の姿は消えていた。
「──消えた…?」
桜庭は拳銃を構えたまま用心深く病室の中を見渡すが、人の気配は少しも感じられない。
「今のは──?」
困惑する桜庭に、凛とした声が掛けられる。
『どうかしましたか、桜庭さん』
久しぶりに聞くその声に、桜庭は反射的に背筋を伸ばした。
「──お久しぶりです、東野参謀」
Aは体を起こして、優しく笑っていた。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 砂漠のうさぎさん» コメントありがとうございます!なんと!!私の知らないところでこの作品の名前が上がっていたんですね!嬉しい限りです!!更新ゆっくりですが頑張っていきます!ありがとうございます! (2019年10月21日 0時) (レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠のうさぎ(プロフ) - あるユーザーさんの紹介から飛んできて一気読みしました。原作の雰囲気を崩さないで新しいキャラが動いていて凄いと思いました。話の展開とか言葉のチョイスとかとても好みです…更新楽しみにしてます、頑張ってください!長文失礼しました (2019年10月20日 21時) (レス) id: ad3e66ea3f (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!あけましておめでとうございます!!また動くみんなを見ることが出来ますね!相変わらずの亀さん更新ですがよろしくお願いします! (2019年1月5日 23時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あけおめです!今年ほ更新頑張ってください!作者さん文スト3期4月放送ですよ!来ましたよ!!いろいろと大変かもれませんが頑張ってください! (2019年1月5日 1時) (レス) id: c482d4ca60 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!番外編も読んでくださったんですね…(感涙)楽しんでもらえてなによりです!!亀更新ですが頑張りますので気長にお待ちいただけると嬉しいです! (2018年11月22日 9時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年8月31日 11時