【文豪ストレイドッグス】蜂の在り処 4章

144針 ページ2

No side


福沢の眠っている部屋から与謝野が出てくる。



「概ね敵さんの申告通りだね。


異能に生命力を吸われてる。
意識が戻るかは微妙なトコだよ。」




「社長を扶けましょう、国木田さん。」



座っていた谷崎が立ち上がる。


谷崎が次に云う言葉は国木田にも判っていた。




「マフィアの首領を殺すンです！」





「……確かに社長の死は絶対に避けねばならん、だが……」




国木田がマフィアを相手にするのに渋るのには理由があった。



まず太宰は別の病院で狙撃の傷の手術中ということ。



そしてもう一つは


「Aはどこに行っちまったのかねぇ……？」




Aは太宰が病院に運ばれていくのを見送るとそのまま何処かへ姿を消した。




「太宰とA抜きで対マフィアなど考えられんぞ……。」




国木田の頬を冷や汗が流れる。





「与謝野女医、乱歩さんは？」




「社長の付き添いさ、相当取り乱してたよ。

無理もないけどね……。」




そこへ敦が扉を勢いよく開けて入ってきた。




「大変です！

マフィアに建物を包囲されています！」




「なんだとッッ！？」





建物の周りには黒いスーツを着たマフィアの構成員達。


そして真正面には地面にひび割れを作りながら歩いてくる、中原の姿。




「悪ぃな、探偵社。


今日は私怨は抜きだ。


社長の首を出せ、そうすりゃ皆死なずに済む。」







「もう嗅ぎ付けたのか……！」




「正門と裏口も固められています！」







探偵社の面々が慌て始めた頃、Aは階段を上っていた。



コツコツと靴音だけが響く。




やがて階段は途切れ目の前に扉が現れた。




Aは躊躇することなくその扉を押し開ける。




扉を開けると風が吹いて、Aの三つ編みが揺れた。




扉を跨いでそのまままっすぐ歩くとAの目に映るのは横浜の街並みと、Aのいる建物の下を取り囲むマフィア達。




Aは探偵社員のいる建物の屋上に居た。






高い場所に居るからか吹く風は強く、Aは髪を手で押さえつけながら地上の人物達を目で確認していく。





『……そりゃ、来るよね………。』




Aは小さく呟くと口の端を上げ、ポケットから携帯電話を取り出す。




『もしもし、私です。』





「Aかっ！！今どこにいる！？」




繋げた先は国木田だった。




『国木田さん、乱歩さん、私に案があります。』





Aの言葉は今まで以上に芯があって心強かった。

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