20針 ページ21
「勝手に居なくなる奴があるか！
見ての通りの散らかり様だ！片付け手伝え！！」
ゴキっと広津さんの腕が大変痛々しい方向に曲がり、悲痛な叫びがきこえる。
うわ、痛そう……。
国木田さんそれ以上広津さんをいじめないであげて下さい……。
哀れみな目を向けながら心の中で言っておく。
あくまで心の中で。
「国木田さーん、こいつらどうします？」
賢治くんが山(銀ちゃん＆立原くん＆黒服達)を指さしながら聞いた。
「窓から棄てとけ。」
私も手伝おう、と思い賢治くんのもとに行く。
敦くんはというと完全に思考が停止しているようでピクリとも動かない。
「これだから襲撃は厭なのだ。
備品の始末に再購入、どうせ階下から苦情も来る、業務予定がまた狂う。
しかしまぁこの程度いつものことだがな。」
『私、後でお菓子持って下の人たちのところ行ってきますね。』
窓から黒服達を投げながら国木田さんに言っておく。
「すまんな、A助かる。」
敦くんの顔にマフィアより探偵社の方が物騒だ、と書いてある。
「国木田くーん、僕そろそろ"名探偵"の仕事に行かないと。」
乱歩さんが思い出したように言った。
「名探偵？
ああ、例の殺人事件の応援ですか。」
「そう、警察がね世界最高の能力を持つこの乱歩さんの助言が欲しいって泣きついてきてさ。」
乱歩さんは机の上に乗って得意げに言った。
『乱歩さん、お行儀悪いですよ。』
「Aも着いてきてよ。1人じゃ僕どこか分かんないし。」
乱歩さんは私の方にしゃがんでお手伝い係に私を選んだが
『駄目ですよ。
片付けもしなきゃいけないし下の人にお詫びも行かなきゃならないんですから！』
「え〜……」
と乱歩さんは頬を膨らます。
いや、貴方は小学生ですか？
国木田さんは未だにほうけている敦くんを手伝いに向かわせるようなことを言ってるが、敦くん絶対聞こえてないな……。
「おい、呆けてないで準備しろ。仕事は山積みだ。」
そうだ、昨日どっかに行ったまま戻ってこない治くんも連れて行ってもらおう！
『ついでに治くんも探して連れていってあげて！
多分どっかの川で流されてるから。』
敦くんの背中にポンと手を当ててあげる。
「は……はは」
敦くんの目にはうっすら涙が浮かんでいた。
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作者名：だし丸 | 作成日時：2017年2月3日 0時
