5章 4-6 ページ31
太宰の声にも辛そうな色が混じっていた。
中也はまたくそ、と口から零す。
「もう指一本…動かせ、ねェ、ぞ」
太宰は辺りを見渡した。
まだ薄らと霧が残り遠くまでは見渡せない。
それでもAを探し出そうと目を動かす。
・
パキリ
何かの音が響いた。
瞬時に太宰と中也はその音の方に目を向ける。
「な、んだ…あれ…?」
「あれは……まさか…」
そこに居たものに二人は驚愕する。
薄紫色に塗りつぶされた人の形をした何か。
顔には鼻や目、口などのパーツは無く、身体の凹凸も感じられないため性別も判らない。
のっぺらぼうのようなそれは人としての生命を感じさせない。
ただ一つ目を引くのが、薄紫色の身体の左胸の辺りに埋まっている紅い結晶。
「ありゃあ、誰かの……異能、なのか?」
「あぁ、そして、恐らく……」
太宰と中原が会話する最中、ソレは二人に掌を向ける。
「「!?」」
その動きは二人にとって、とても見覚えのある動きだった。
「──」
ソレが何かを呟いた気がした。
実際には口が無いので、喋った様には見えなかったし、耳に声が届いた訳でもない。
しかし何か言葉を発した様に感じた。
「不味い…ッッ!!」
太宰は咄嗟に中原を庇うために手を伸ばす。
その瞬間、ソレの掌から白い針が飛び出した。
「(当たるッッ!!)」
中原がそう感じた瞬間
・
パキンッッ
甲高い音がして何かが割れた。
それと同時に二人に迫っていた針がフッと消えた。
二人はソレに目を向ける。
パキッピシッと砕ける音が響く。
その正体は左胸に埋まる紅い結晶に深く突き刺さるナイフのようなもの。
結晶が散らばり床に落ちた。
赤い光が霧散し、薄紫色のソレは徐々に消えていく。
カランとナイフのようなものが落ちる。
『大人しくしてて、って云ったのに…』
ボソリと聞こえた声にハッとした。
「「A…!?」」
『どうも……』
Aは刺された脇腹を押さえながらズルズルと歩いてくる。
「今のはお前の…」
『うん【天空の蜂】』
中原に答えながらAは落ちていたナイフのようなもの─兜割りを拾い上げた。
兜割りを鞘に戻してAは突然太宰へと倒れ込んだ。
・
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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます!!そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい!終始悶えます(笑) (2018年9月9日 1時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ!見たかった……これからも頑張ってください!! (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます!!本編の方も読んでくださってるんですね!ありがとうございます!すごく嬉しいです!更新頑張ります! (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです!これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2018年3月23日 18時