5章 2-4 ページ25
『…はぁッ………』
Aの口元から苦しそうな息が漏れる。
刺された横腹を抑える手に血がべっとりと付く。
ふらつく足でAは自分を刺した人物を睨みつけた。
″彼″はフョードルとおなじ顔をしていた。
″彼″の手には赤い結晶が輝いている。
リンゴを持つ″彼″と髑髏を持つフョードル。
二人は互いに自分の持つ球体を掲げながら、背中合わせになって囁く。
「ぼくは罪」
「ぼくは罰」
おなじ声を持つ二人の言葉が、ドラコニアの空気を揺るがす。
冷たく硬質な響きには、あらゆる全てを嘲り、弄ぶ気配があった。
「知ってるかい？」
髑髏を持つフョードルが嗤う。
「罪と罰は仲良しなんだよ」
罪の果実を持つ彼が笑む。
『……罪と、罰？』
Aは彼の云った言葉を繰り返した。
その口の端からは赤い線が顎へと流れていく。
「安心してください」
「そのナイフには太宰君のとは違う毒を塗っています」
「致死性はありませんが意識に作用する麻痺性の毒です」
「しばらくは動けないでしょう」
フョードルと彼は交互に口を開いた。
『殺す気は無い、って云いたいの……？』
Aは痛みに顔を歪めながら、掠れる声で問いかける。
「ええ、この一連の騒動を後に伝える人が必要ですから」
「僕が云うだけでは信憑性は薄いでしょう？」
フョードルが話しているのか、彼が話しているのか
Aの霞み始めた視界では判らなくなる。
徐々にAの体から力が抜けていき、そして地面に跪く。
「君の異能も僕と同じかと思いましたが」
「どうやら違ったようですね」
「でも似ています」
「君の異能も何かが違う」
地面に倒れたAの頭上から声が降ってくる。
その言葉にAはぐっと噛み締める。
『(……私は、この異能は──)』
ゆっくりとAの目が閉じられる。
「おやすみなさい」
Aの意識が無くなったのを見て、フョードルと彼は再び部屋の中へと視線を戻した。
「境界が消滅する」
「部屋が目覚める」
フョードル達の視線のさきで、赤い光が膨れ上がる。
「終焉の化身、異能を喰らう霧の王」
「熱量そのままに、本能のままに、暴れ、喰らい、咆えたけりなさい」
紫水晶の瞳が歪み、唇が弧を描いた。
二人の声に導かれるようにして、塔の天頂から光が溢れ出る。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます！！そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい！終始悶えます（笑） (2018年9月9日 1時) (
レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ！見たかった……これからも頑張ってください！！ (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます！！本編の方も読んでくださってるんですね！ありがとうございます！すごく嬉しいです！更新頑張ります！ (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです！これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：だし丸 | 作成日時：2018年3月23日 18時
