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5章 2-5 ページ26

溢れた光は赤い霧のように世界を侵食し、あっというまに大きくなっていく。



やがて輪郭をととのえ、ひとつの巨大な生物をかたちづくる。



蒼白な月のもと、骸砦に蜷局を巻くようにしてらそれは生まれ出た。



蛇のような体躯は輝く鱗で覆われ、長い鬣が威風を放つ。



その爬虫類を思わせる手だけでヨコハマのビルを握りつぶせるだろう。



狂暴さを感じさせる牙のひとつひとつが、人の体よりはるかに大きい。



暴虐さと神聖さを併せ持つ、稀有なる姿。



龍。




人の世に姿を見せぬはずの姿でもって降臨した存在を見て、フョードルはぞっとするほど美しい笑みを浮かべた。




「これは暴走でも特異点でもない」



神託を告げるようにフョードルは云う。



「龍こそが、異能が持つ混沌の本来の姿なのです」




ヨコハマの街に、龍が降り立つ。



龍は咆哮でもって、みずからの存在を世界に知らしめた。








5章 4-1



上空にある衛星から骸砦を注視していた異能特務課も、龍の出現にいち早く気付いていた。



特務課の通信室では、オペレーターの悲鳴に似た声が上がる。




「特異点異常値が上昇!」


恐怖と焦りを滲ませて、オペレーターは画面にうつる計測値を見る。




「六年前の二倍、二・五倍…異常値上昇中!」



責任者である坂口安吾は、危険水準をあらわす赤色点灯に強張った表情を浮かべた。




現在、特務課が打てる手はすべて打ってある。


あとはどうすることもできない。



とはいえ、気楽に見ているだけなど到底できるものではなかった。




焦燥感と祈りで汗が滲む手を机に叩きつけ、安吾が問う。



「A5158の現在地は?」




オペレーターが安吾に答えるより先に、機械を通した通信音声が響いた。



──おたついてんじゃねぇ、サンピン!と。



「──!」




「いい感じに場があったまってるじゃねェか」



通信越しに坂口安吾を一括した男──A5158のコードネームで呼ばれる異能者、中原中也は、にやりと口元に笑みを浮かべた。



ヨコハマ上空。



霧が届かないほどの高高度で唸りをあげ滞空しているのは、異能特務課の機密作戦用輸送機『鴻鵠』だ。




ごうん、と空洞が揺れ、ゆっくりとハッチが開けられた。



冷たい空気とともに、まるい月が中也の視界に入ってくる。



霧の立ち込めるヨコハマと、ヨコハマを喰らい尽くしてしまいそうなほど大きな龍、という幻想的な風景がそこにはあった。



5章 4-2→←5章 2-4



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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます!!そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい!終始悶えます(笑) (2018年9月9日 1時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ!見たかった……これからも頑張ってください!! (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます!!本編の方も読んでくださってるんですね!ありがとうございます!すごく嬉しいです!更新頑張ります! (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです!これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:だし丸 | 作成日時:2018年3月23日 18時

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