間幕 3-4 ページ20
「……っ！」
太宰の両目が見開かれる。
熱を帯びた痛みが胸に走った。
「云っただろ？」
太宰の背後から声がかかる。
白い髪が流れ、赤い瞳が楽しげに歪む。
「私の予想を超える者など現れない、と」
太宰の背後にいたのは、ドラコニアに入ってこられないはずの澁澤龍彦。
澁澤のてには鈍く光るナイフがあり、ナイフの刃は太宰の背に突き立てられていた。
澁澤は笑いながら、ナイフを更に深く差し込む。
肉の斬れる厭な音に、Aが喉の奥でヒュッと息を吸う。
『治くんから離れてッッ！！』
Aは兜割りを澁澤の頭めがけて思い切り振るった。
しかしそれは虚しくも空を切り、太宰を刺した澁澤はナイフから手を離す。
『治くん！！』
Aは慌てて太宰の体を支える。
「計画が成就する瞬間に油断する程度の人だったんだね」
失望と嘲弄をこめて云う澁澤の背後では、ドラコニアの床と壁が透明になり、膨大な異能結晶体のコレクションが見えていた。
目にし、吸収したコレクションはほんの一部だったのだ。
太宰はくずおれそうになる体をAに凭れさせながら、胸を押さえて呻く。
「鍵は…閉めた筈──」
視線を扉と、そして扉を閉めた筈のフョードルに送った。
フョードルは笑っていた。
──澁澤に刺された太宰を見て、ひどく面白そうな表情を浮かべている。
それだけで明らかだった。
なるほど、と、太宰は呟く。
Aはギリと歯を食いしばった。
大宰の生暖かい血が滲みだし、砂色の長外套にまるい染みを作っていくのが判る。
「ここで裏切りか…」
「云ったでしょ。
余興は多い方がいいと」
フョードルが冷たい微笑を太宰に向けた。
「あなたが余興ですよ」
フョードルは太宰とAと結託してなどいなかった。
フョードルは太宰とAに与している振りをして太宰をドラコニアにおびきだし、鍵をかけたと見せかけた。
鍵はかかっておらず、澁澤はあとから自由にドラコニアに入ってくることができたのだ。
「…それで」
太宰が苦しげな息のもと、挑発的に澁澤を見上げる。
「次は、どうする」
太宰の体から力が抜けていきAは支えきれず、太宰が床に倒れ込む。
『治くん…！』
Aは太宰の側にしゃがみ込んだ。
「次はない。目的の異能はもう見つけた」
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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます！！そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい！終始悶えます（笑） (2018年9月9日 1時) (
レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ！見たかった……これからも頑張ってください！！ (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます！！本編の方も読んでくださってるんですね！ありがとうございます！すごく嬉しいです！更新頑張ります！ (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです！これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：だし丸 | 作成日時：2018年3月23日 18時
