間幕 3-3 ページ19
Aはヨコハマの街の中で霧や異能者達の様子の把握。
そして太宰は骸砦で澁澤の行動の監視。
骸砦に集まる三人、太宰とフョードルと澁澤は、それぞれの目的も意思も異なるからこそ、互いの意図を読み合い、裏切りを警戒し、三鼎立の状況となって膠着していた。
だが、目的を同じくするものが現れればどうなるか。
二対一となり、均衡が崩れる。
更に、意図的に骸砦に向かい、わざと拘束されていたAが加われば、三対一となる。
今回、太宰とAはフョードルという、ヨコハマの霧を消すという同じ目的を持つもの同士で手を組むことにより、澁澤を出し抜いた。
澁澤がヨコハマを狙うことは避けられない。
それを読んだからこそ太宰とフョードルは先んじて澁澤に協力するかたちをとり、Aも骸砦に潜入した。
フョードルは結晶を掲げ、太宰に囁く。
「さあ、まずはあなたのキャンセル能力で、結晶体さという殻を無効化し、異能をあるべき姿に戻してください」
フョードルの勧めにしたがうように、太宰が二つの結晶体に手を伸ばした。
「敦君達が無事だといいが……」
太宰の指が触れると、硬い宝石のような表面が溶け、かたちを失う。
どろりと光が血のように液体となって流れ、躍り、廻り、空中で混じりあう。
二つだった光は溶けあって回転し、ひとつの完全な球体を形作った。
生まれたのはリンゴ。
太宰の手の中で生まれたリンゴは、ひとりどに上昇し、ドラコニアの天井近くで停止する。
赤いリンゴが、能力を開花させた。
それはまさしく吸収だった。
十、百、千、二千……。
あまねく結晶体を、リンゴは貪欲に喰らい尽くす。
吸い寄せられる結晶達の光が嵐となり、ドラコニアを吹き荒れる。
まばゆい光が押し寄せ、目を開けることすらままならない。
Aは手で光を遮るようにして、結晶達の吸収を見る。
もはや赤い光は煮えたぎり、地獄の様相を見せている。
内包する過剰な力が空間を圧倒する。
だが、太宰は毅然として自分がつくりだした赤い光球を見つめ、呟いた。
「これを触れて消せば、すべてが終わる」
凛とした横顔には、決意と責任が滲んでいる。
太宰の指が、巨大化した光に伸びる直前。
Aは光球から太宰の顔に目を移す。
その目が大きく見開かれた。
『治くんッッ!!!』
どん、と、太宰の背に何かがぶつけられた。
・
99人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます!!そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい!終始悶えます(笑) (2018年9月9日 1時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ!見たかった……これからも頑張ってください!! (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます!!本編の方も読んでくださってるんですね!ありがとうございます!すごく嬉しいです!更新頑張ります! (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです!これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:だし丸 | 作成日時:2018年3月23日 18時