此の場所は…… ページ21
Aは真っ直ぐにその丘を登っていく。
その背中がどこか寂しそうに見えて、太宰と中原は声をかけることが出来ず、追いかけるしかなかった。
丘を登りきった所でAの足が止まる。
後ろから登ってきた二人も足を止めて、勢いよく吹いてきた風に目を瞑る。
『此処に連れてきたかったんです』
Aの静かな声に二人は目を開けて、その光景を目に入れた。
「「ッ──」」
二人は静かに息を呑む。
丘の上に草原が広がっていた。
そして古びた低い建物。
それは半壊していて、屋根や窓ガラスは崩れ、嘗ては白かったであろう壁も海風と日差しによって黒くくすんでいた。
そしてその建物を取り囲むようにある煉瓦の囲壁と門。
それにも蔦が巻き付けられ不気味さを際立てていた。
それらすべての光景が、何年も人が来ていないことを示していた。
「──此処は、一体……」
太宰は呆然としたままぽつりと呟く。
『孤児院ですよ、ボクが小さい頃に居た、ね』
それに静かに答えたA。
風で靡く髪を押さえつけながら、建物に目を向けた。
「お前、孤児院で育ったのか…」
中原も風で帽子が飛ばされないように手で押さえる。
『ええ、気がついたら此処にいました』
Aは門を抜けて建物の前まで歩き、見上げるように上を向いた。
「なんでこんなに廃れてんだ？そんで、俺達を此処に連れてきた理由は？」
中原と太宰も門を通り過ぎ、Aとは距離を置いて問いかけた。
Aはゆっくりと体を向ける。
Aの後ろから風が吹き抜けて、Aの紅い左目がチラチラと見える。
『太宰さんは、坂口さんからボクのことを云われましたか？』
「！」
太宰の体が少しだけ強ばった。
その反応にAは確信した笑顔を浮かべる。
『やっぱり……。
坂口さんはこう云ったんじゃないですか？
″鳥羽は過去に唯一の家族を殺した″』
太宰の口端がきつく引き伸ばされた。
中原も驚きで目を瞠る。
『ボクが殺したのは兄です。
そしてそれは六年前、お二人もよく知っている出来事がありましたよね？
龍頭抗争の最中です』
「龍頭抗争……」
太宰はAの言葉を繰り返した。
「話しが全く読めねえ…お前、結局何が云いてぇんだ……」
Aは全てを諦めたような笑顔のまま、口を開いた。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 螺旋さん» コメントありがとうございます！！そんなに喜んでいただけて私も嬉しい通り越して恥ずかしいです(笑)またいつでも読みに来てください！ (2019年10月17日 0時) (
レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
螺旋 - 初めましてです!めっちゃすんごく感動しました!!なんでこんな良い作品に気付けなかったのだろう…。こんな素晴らしい夢小説を書いて頂きありがとうこざいました!!他作品(?)も頑張ってくださいね！ (2019年10月16日 22時) (レス) id: db579f6a09 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます！！そんなふうに言って頂けて凄く幸せです！この作品を楽しんで頂けて何よりです！これからも頑張っていきます！！ (2018年10月16日 10時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
あまね - 初めまして、素敵な作品を最後まで書いてくださりありがとうございました! 二次創作でこんなに素敵な作品に出会えるとは思っていませんでした。最後まで飽きない設定、魅力的な主人公、時の流れ方や人の掛け合いがどストライクでした。これからも応援しています!! (2018年10月16日 2時) (レス) id: a12fc59e9a (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - Nightさん» コメントありがとうございます！なんとか完結出来ました！また他の作品も頑張っていきます！ (2018年9月9日 11時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：だし丸 | 作成日時：2018年3月23日 15時
